【KENTA特別インタビュー1】

 ノアのKENTA(30)が、師匠の小橋建太(44)を超えを誓った。今年1月にヒール軍団のディスオベイ入り、3月にはモハメドヨネ(35)を斬り捨てて反体制のユニット・ノーマーシーを結成した。金丸義信(35)平柳玄藩(31)、そして6月には帝王・高山善広(45)を迎え入れた。

 最初はヨネ、副社長を務める丸藤正道(32)仲田龍GM(49)をターゲットに、リング内外で戦いを繰り広げた。マッチメーク改善、経営方針への不満を訴えてきた。ノア改革への熱い思いも、最初はなかなか理解されることがなかった。

 「最初のころは、今までと違うことをやらなくてはという思いで、試行錯誤の連続だった。すごい遠回りをしたような気もするけど、ノアの端っこから徐々にメーンストリートに入ってきた」と振り返る。

 高山の加入以前には、ジュニアヘビー級の選手だけだったノーマーシー。ヘビー級のヨネ1人対KENTA、金丸、平柳の3人という屈辱的なマッチーメークもあった。KENTAは6月にはヨネとの一騎打ちに敗れた。だが、高山を味方に引き入れたことで流れが変わった。

 KENTAにとって、その真価が問われるのが3日の仙台大会開始のグローバル・リーグ(GL)戦。そして27日の東京・有明コロシアム大会での潮崎豪(29)に挑戦するGHCヘビー級選手権だ。同じ小橋門下の後輩・潮崎は、KENTAより先にノア最高峰のGHCヘビーのベルトを巻いた。小橋の14回を超える15回の防衛を果たした杉浦貴(41)を破り、今年7月に2回目の戴冠を果たした。その後、秋山準(42)と高山の挑戦を退けている。

 「潮崎は、まだまだ物足りない。そういうやつに団体の象徴を任せておけない。GHC王座を奪うことで、俺らが確実に主導権を握れる」ともくろむ。

 その先に見すえるのは、師と仰いできた小橋だ。KENTAの本名は小林健太(こばやし・けんた)。師匠の名前の読み方に、1文字「や」を加えただけ。全日本入門から、ノア旗揚げと常に小橋を目標に戦ってきた。その小橋は、今年7月に1年7カ月ぶりにけがから復帰。先月26日の横浜大会では、復帰後の小橋とタッグで初対決。容赦ないキックを、KENTAは小橋の顔にたたき込んだ。

 試合後のKENTAは「見て分かるとおり、小橋コールが多いな。まぁ、小橋の復帰を心待ちにしていたファンが多いからな」と振り返った。「小橋が自分の自分の原点、根本に流れているのは否定しようのないこと。だけど、俺らは現在進行形。あっちは過去形。確実に前に進んでいる俺たちとは違う。もしかしたら、向いている方向も違っているのかもしれない。必ず彼より大きくなってみせる」と、小橋に代わりノアの大黒柱として戦い続ける決意を示す。

 27日のGHCヘビー級選手権当日は、秋山の3冠ヘビー級に太陽ケア(35)が挑戦、7カ月ぶりに復帰する丸藤は杉浦と一騎打ちを行う。敵は目の前の潮崎だけではない。

 「不思議と意識はしていない。自分がちゃんと締められれば、確実に他の試合を上回れると思っている。3冠戦について言えば、昔の話。あの2人(秋山とケア)にとっては、過去の思い出なんだろうけど。それより、自分は現在進行形」と言い切る。

 エースの自覚は十分だ。【小谷野俊哉】