<DREAM.5:大阪大会>◇21日◇大阪城ホール◇ミドル級ワンマッチ◇1万1986人

 秋山成勲(32=フリー)が1回6分34秒、柴田勝頼(28=ARMS)を袖車で絞め落として失神1本勝ちを収めた。昨年大みそか以来、約8カ月ぶりの試合でDREAMには初参戦。総合格闘技では不利といわれる柔道着を着用して臨んだ復帰戦だったが、相手の攻撃を完ぺきに封じるほどの圧勝だった。

 約8カ月のブランクを感じさせない完勝劇だった。試合開始のゴング直後こそ右ローキックで相手の出方を見た秋山だったが、5分すぎに柔道時代に培った払い腰でグラウンドへ。寝かせてしまえば赤子同然、とばかりに柴田の首に腕を回して一気に絞め上げること数秒。柴田が白目をむいてピクリとも動かないほどの失神1本勝ちだった。

 これまで着用してきたトランクスではなく、柔道着のまま試合に臨んだ。「大阪城ホールは自分が柔道の日本代表だった時に負けた苦い思い出があったんでね…。どうしても道着を着て決着をつけたかった」。06年大みそかの桜庭和志戦で全身にクリームを塗る違反行為を起こして以来、ファンのブーイングは定番。地元大阪でのDREAM初参戦とあって、会場には批判の声と拍手が混然一体となったが「入場してブーイングが起こるのなんて、僕1人だけでしょ」。アンチ秋山ファンの反応を楽しむ余裕すらあった。

 これほど人生に翻弄(ほんろう)され続ける格闘家もいない。在日韓国人4世として生まれ、3歳から柔道を開始。近大卒業後には韓国へ渡り、市役所に勤務しながら五輪出場を目指した。だが現地での差別感情は激しく、01年に帰国して日本国籍を取得。04年にプロ格闘家に転向した。

 だが格闘家として鼻骨骨折などで思うように練習ができなかった今春、韓国のトーク番組に出演。そこで話した韓国語が「ぼくとつとしていて面白い」と今度は仕事のオファーが殺到。今年6月には人気グループ東方神起らとコンサートを行うなど、活動の幅を広げることになった。

 DREAMではミドル級GPトーナメントが開催されていることもあり、同級王者決定後にはタイトル戦に挑む可能性もある。「それはあつかましいでしょ」と今のところは否定的だが良くも悪くも団体のエースであることは間違いない。ヒーローとヒールの顔を併せ持つ秋山の「夢」はどんな形で続いていくのか。【山田大介】