<プロボクシング:WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ12回戦>◇17日◇さいたまコミュニティアリーナ

 強い!

 「KOダイナマイト」の本領発揮だ!

 WBA世界スーパーフェザー級王者内山高志(30=ワタナベ)が、鮮やかな1発KOで初防衛に成功した。身長で約13センチ上回る同級13位アンヘル・グラナドス(35=ベネズエラ)を、右強打で初回から圧倒。6回1分42秒、右フック1発でリングに沈め、TKO勝ちを収めた。王座奪取時から2連続KO勝利は、日本ジム所属世界王者では3人目、80%のKO率でも歴代2位に浮上した。次戦は9月に同級暫定王者ホルヘ・ソリス(30=メキシコ)との王座統一戦が有力。内山の戦績は15戦全勝(12KO)。

 「KOダイナマイト」の異名に恥じない、豪快すぎる1発だった。6回1分すぎ、内山の狙い澄ました右フックで、185センチの大男グラナドスが前のめりにダウン。立ち上がろうとしたが、片ひざをついたまま動かない。1分42秒、レフェリーがたまらず試合を止めた。日本ジム所属の世界王者で王座奪取時と初防衛戦で連続KOしたのは柴田国明、畑山隆則に次いで3人目。KO率は80%となり、平仲明信に続く歴代2位に浮上した。それでも「立たねーな、あ、終わったって感じでした。ホッとしましたね」と何事もなかったように笑った。

 豪快なKO劇は地道な攻撃があってこそだった。相手が長身と決まると、陣営が設定したテーマは「下への攻撃」。加山トレーナーは「意識は下。右ボディーストレートなどでどれだけこつこつ意識させられるか」。ミット打ちはもちろん、180センチ以上の選手を集めたスパーリリングでも相手に下を意識させるコンビネーションを磨いてきた。挑戦者の意識を下へ向かせた上での顔面へ右フック。作戦通りのKO劇だった。

 その攻撃を持続するために体もつくった。2カ月前から、自転車トレーニングを本格的に開始。K-1世界王者に2度輝いた魔裟斗氏を指導したフィジカルトレーナー土居進氏(39)の下、自転車型トレーニング器具の30秒間ダッシュを極限状態で繰り返した。「魔裟斗選手は最初のパワーを持続できる。内山選手はグンと上がるけど落ちやすかった。でも持続できるようになってきた」と土居氏。内山も「6回が始まる前も全然疲れてなかった。後半もガンガンいける雰囲気があった」と傷ひとつない顔で振り返った。

 1月の王座奪取後、関係者へのあいさつや祝宴などで休みはなし。プロ入り前に営業マンも経験していただけに、お酒は飲めないながらも律義に出された食事は食べた。その結果、体重は自己最多68キロに。約1カ月半後には独自の調整を開始した。もともとプロ入り後から食事や栄養の本を読んでいた。さらに冷蔵庫には常に約5種類の果物を入れているフルーツ好き。塩分が高いものや揚げ物を控えてフルーツを食べた。祝宴明けで調整に苦しむといわれる初防衛戦前の調整を乗り越えた。

 日本ジム所属世界王者はこの試合前まで長谷川、名城と2連敗中だったが、地元凱旋(がいせん)試合で悪い流れを断ち切った。それでも「自分はまだまだ」と謙遜(けんそん)した。次戦は9月の王座統一戦が有力。「もっと強くなりたい」。最強王者へ-。内山の真の戦いは、これから始まる。【浜本卓也】