ボクシング前WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(29=真正)が、亡き母に世界2階級制覇を届ける。24日にがんのため死去した母裕美子さん(享年55)の通夜が25日、兵庫県西脇市内で営まれた。300人以上の参列者の前では気丈に振る舞っていた長谷川が、親族代表のあいさつでは泣きながら、静かに語り始めた。

 「前回の4月(11度目の防衛戦)に負けて、母の体調が悪くなりました。負けたからと、自分を責めた時期もありました。でも逆にこんなつらい病気と闘っている母に励まされました。(医師から)6月に『あと3カ月もたない』と言われても、一生懸命に闘っていました。昨日の朝まで、最後まで闘いました」。

 病院での最期は、父大二郎さん(54)と、5人きょうだい全員で見守った。大二郎さんは喪主あいさつで「思い切り大きな目を開けて、ニコッと笑って、息を引き取りました」と明かした。それは長谷川に向けた最後の激励メッセージでもあったのだろう。

 長谷川は「母親が教えてくれたもの、残してくれたものをしっかりと守りながら、これからも頑張っていきたい」。WBCフェザー級1位ブルゴス(メキシコ)との世界王座決定戦が1カ月後の11月26日(愛知・日本ガイシホール)に迫る。魂を拳に宿し、天国に朗報を届けてみせる。26日に、葬儀・告別式が行われる。【大池和幸】