【矢野通スペシャルインタビュー2】

 新日本のIWGP王者・棚橋弘至(34)からベルトを強奪した矢野通(33)。ベルトを“人質”に11月12日の大阪大会での初挑戦を認めさせた。

 強奪したベルトは、IWGPを矢野通のYのYWGPに、チャンピオン名を「ヤノートールー」と、油性ペンで書いた粘着テープを張り付けている。試合では邪道(43)が、厳重にジュラルミン製のアタッシェケースに入れてリングサイドまで運ぶ。22日の後楽園大会では、試合後に棚橋に奪回されたが、アタッシェケースの中のベルトは、かつて棚橋が11回防衛したIWGP

 U-30のベルトだった…。「ベルトの呪いは、俺の味方だ」と矢野は笑った。

 ヒール軍団ケイオスは2年前に、矢野が中心となって結成された。神の子・中邑真輔、狂乱ファイター飯塚高史、多重人格ヒデオ・サイトー、東京ピンプス高橋裕二郎、リキプロ石井智宏、ゼロワン田中将斗、そして邪道&外道。結構というか、かなりめんどくさそうな軍団だ。

 「好き勝手にやってくれが基本だから。永田裕志が『あいつは、ケイオスの中で歯車になってしまっている』なんてほざいてたけど、それでいいんだよ。俺が中心の歯車で、回ってんだよ。こぼれそうになったら、すくってやるって感じだな」。

 風向きが変わったのは8月13日の東京・後楽園大会、G1クライマックスの棚橋戦だ。絶対的ベビーフェイスとして戦うIWGP王者の棚橋にブーイングが浴びせられ、矢野に声援が集中した。棚橋が勝てば、最終日を前に決勝進出が決定してしまうという要因があったが、思わぬ成り行きにヒートアップ。矢野が赤い“マイ椅子”攻撃で棚橋を流血に追い込み、最後は必殺の鏡割(変型サイドバスター)からフォールを奪った。満員の聖地に「ヤノ・トー・ルー」コールがさく裂した。

 「やってることは、前と変わってねぇのに。まぁ、正月のドームで勝手に、ロブ・ヴァンダムのをパクって『ヤノ・トー・ルー』って、やり始めたくらいから変わったかな」。

 試合場内の“顧客満足度NO.1”の男。それが矢野通だ。【小谷野俊哉】

 ◆矢野通(やの・とおる)1978年(昭53)5月18日、東京・荒川区生まれ。7歳でレスリングを始め京北高でインターハイ、全国選抜、国体、ジュニア五輪で4冠。日大レスリング部で全日本学生フリー、グレコ両部制覇。02年1月新日本入門、同5月18日にブルー・ウルフ戦でデビュー。07年真壁刀義とIWGPタッグ王座。得意技は鬼殺し、裏霞、鏡割。186センチ、115キロ。血液型B。