WBA世界スーパーフェザー級王者・内山高志(33=ワタナベ)が、「消える左」でV7防衛を狙う。今日6日の同級10位ハイデル・パーラ(30=ベネズエラ)との7度目の防衛戦(東京・大田区総合体育館)へ向け、左ジャブの軌道でフックを出す新パンチを完成させた。5日、試合会場で調印式と前日計量に臨み、58・9キロのリミットでクリアした。

 昨年の大みそか、V6防衛に成功した大田区総合体育館に内山が足を運んだ。計量は、リミットで一発クリア。「ここは良いイメージしかない」とつぶやいた。勝てば日本人の現役王者で最多の7度目の防衛。「多少の慣れはあるが、慣れないためきつい練習をしてきた。世界挑戦時より、大みそかより厳しい練習を積んできた」。後悔のない準備を整えた自負が言葉に表れた。

 無敗挑戦者のパーラを幻惑する左フックをスタンバイした。「KOダイナマイト」が愛称の右ストレートは、研究が尽くされている。その右を当てるには左が不可欠。ひそかに左ジャブと同じ軌道で、左フックを放つ練習を重ねてきた。相手は左ジャブと思って顔正面をガードするが、その横からこめかみに左フックが飛んでくる。内山とスパーリングした日本王者クラスは「見えない」「見えにくい」と声をそろえる。「消える左」とも言うべきパンチだ。

 内山は「ジャブなのか、フックなのかを分からないように意識して打ちます」と明かし「フックで相手の右目付近をカットさせる可能性もあるので」と説明。「消える左」を効果的に使う考えを示した。最近のスパーリングでは「打ったパンチで相手がよろめくなあと感じた。試合に出ればいいですね」との手応えもある。計量後は朝鮮ニンジンとスッポンを煮込んだスープを飲み干し、減量でしぼんだ筋肉を回復させた。

 試合前日、ファンだった松井秀喜氏が国民栄誉賞表彰式に登場した。「常に本塁打の期待があった方。いつも松井選手の打席だけ見ていました。自分もあいつの試合ならば、外れがないというボクサーになりたい」。「消える左」を駆使したV7防衛成功を信じ、内山がKOショーの舞台を待つ。【藤中栄二】