国内最速のプロ6戦目で世界王座獲得を狙う、WBC世界ライトフライ級4位・井上尚弥(20=大橋)が、準備万端でリングに上がる。今日6日の同級王者アドリアン・エルナンデス(28=メキシコ)戦を控えた5日、都内で前日計量に臨んだ。直前まで慌ただしく動いた王者とは対照的に、約8キロの減量をほぼプラン通りに乗り切った。フライ級転向も視野に入れる「怪物」が、まずは1つ目のベルトを手に入れる。

 「気合だった」と振り返った約8キロにおよぶ過酷な減量を乗り越えると、井上は安堵(あんど)の表情を浮かべ、ゆっくりと水を口にした。「あとは明日だけです」。短い言葉で固い決意を表した。同じリミットいっぱいの48・9キロでのクリアも、祈るように計量器に乗った王者エルナンデスの姿から、精神的にも大きなアドバンテージを得た。

 脈拍は1分間に104回。髪を丸刈りにして計量時間直前に姿を見せた王者は呼吸も荒く、紅潮した顔の汗をタオルで何度もぬぐった。減量苦は明らかだった。この光景にはトレーナーの父真吾さんも「相当きつそうでしたね」とにやり。「ボディーを増やします」と、スタミナ不足が確実な王者の攻略策を明かした。

 井上陣営は王座獲得後の構想もすでに練っている。筋力が増え、プロデビュー戦時と比べると、基礎体重は約2キロ増。同階級で防衛し続けることは容易ではない。井上は「作った筋力をそぎ落とさないと落ちない」と話すなど、パンチ力の低下も感じている。真吾さんも「フライ級(50・8キロ)で具志堅さんの連続防衛記録を超えることが目標」との意向を示しており、初防衛戦後にも2個目の日本記録更新を目指す意向だ。

 スーパーフライ級を加えた3階級制覇、王者同士の団体王座統一戦など、「怪物」井上にかかる期待はどんどんふくらむ。だが、すべては「集大成であり、出発点」の今日の一戦を乗り越えてこそだ。ボクシングを始めて14年。井上が世界一のベルトをその腰に巻く日が来た。【奥山将志】