大相撲春場所で3度目の優勝を果たし、大関復帰を確実にした関脇照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が31日、2度目の昇進伝達式に臨む。同日の夏場所(5月9日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会で大関昇進が承認されれば、東京・江東区の伊勢ケ浜部屋で使者を迎える運び。大関から平幕以下に落ちて横綱に昇進すれば史上初。前回は横綱昇進の意欲を示した中、2度目の口上に注目が集まる。

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照ノ富士の大関復帰が、いよいよ正式に決定する。同日午前9時の臨時理事会後、日本相撲協会審判部から部屋に使者が送られる。陥落翌場所に10勝以上挙げれば復帰できる特例では、伝達式は行われない。大関で2度の伝達式を経験するのは、77年初場所後に昇進した魁傑以来44年ぶり2人目となる。

その魁傑の口上は、2度目ということもあり「謹んでお受けします」とシンプルだった。ただ前例が1つしかないため“慣例”はない。照ノ富士はオンラインでの会見に応じた29日時点で「(師匠の伊勢ケ浜)親方と話をして決めます」と話すにとどめた。

初昇進時は最高位への意欲があふれ出た。前回昇進した15年夏場所後の伝達式では「謹んでお受けいたします。今後も心技体の充実に努め、さらに上を目指して精進いたします」と述べた。平成以降に昇進した28人中16人が「大関の名に恥じぬよう」など「大関」の地位に言及した中、異例の綱とり宣言だった。

現行のかど番制度となった1969年名古屋場所以降、大関陥落を経験して横綱に昇進したのは79年の三重ノ海だけ。陥落翌場所に復帰したケースを除けば、初めての快挙となる。29日には「自分が昔から目標にしていたのは横綱という地位。もう1歩先を進むところまできた」と話していた。伝達式の様子は協会公式YouTubeチャンネルで生配信される予定。全国、世界中の相撲ファンが見守る中、看板力士として再出発する。【佐藤礼征】

◆魁傑は4場所で陥落 照ノ富士を除いて唯一、平幕以下に陥落して大関に返り咲いた魁傑は“再大関場所”が今の照ノ富士と同じ29歳だった。大関復帰後は1度も2桁白星に到達できず、4場所後の77年九州場所で関脇に陥落。左肘の負傷などを理由に、約1年後の79年初場所中に30歳11カ月で現役を引退した。