[ 2014年7月6日11時4分

 紙面から ]<W杯:ブラジル2-1コロンビア>◇準々決勝◇4日◇フォルタレザ

 サッカー王国の若きエースを悪夢が襲った。FWネイマール(22=バルセロナ)が、コロンビア戦で相手選手と激突。第3腰椎骨折で全治4週間の見通しとなった。今大会残り試合はもちろん、8月のスペインリーグ開幕にも間に合わない可能性が出てきた。チームは勝利したが、W杯の主役の離脱に、ブラジル国内には衝撃が走った。

 戦慄(せんりつ)が走った。「わざと倒れすぎる」と批判の声も多いネイマールが、普段とは明らかに違う様子で倒れた。終了間際の後半41分。自陣ペナルティーエリアすぐ外で、こぼれ球を足元に収めようとした時、背後からDFスニガに激突された。プロレスのジャンピングニーのような体勢で、右ひざを腰付近に打ち付けられると顔をゆがめて激しく転倒。異変を察知したDFマルセロが飛んできて、すぐにチーム医師を呼んだ。

 担架に横たわるネイマールは片手で顔を覆った。激しい痛みと悔しさに涙が頬を伝った。試合前、ツイッターに「神様が我々を祝福し、守ってくれる」と記した。それが結果は、第3腰椎骨折で全治4週間。チーム医師が「手術は必要ないが、患部を固定しないといけない。残念だが、もうプレーできない」と説明するケガを負った。英デーリーメール紙(電子版)はネイマールのものと思われる腰椎のエックス線写真を掲載。はっきりと骨が折れた画像が映っていた。

 国歌斉唱で涙を流してきた若きエースは、最後は悲しみの涙とともに大会を去った。病院での検査後、チームメートと再合流。空路リオデジャネイロへ移動した。空港では自身のイニシャル「njr」が入った白いキャップをかぶり、車いすに乗って登場。仲間と抱き合うシーンもあった。空港からは1人、救急車に乗ってキャンプ地テレゾポリスに戻った。

 勝利にも喜びの声はなかった。主将のチアゴシウバは「(スニガが)汚いプレーをする選手でないのは知っている。でもあの瞬間は少し暴力的だった。反則をするにしても、もう少し違うやり方があっただろうに…」と絶句。ルセフ大統領も自らのツイッターに「全ての国民と同じように、私も痛みを分かち合う」と書き込んだ。

 ネイマールは今大会の主役だった。4ゴールをマークした22歳はセレソンをけん引してきた。練習場では乱入してきた子供のファンと記念撮影。チャーミングさで人気者だった。ネイマールの離脱はブラジルのみならず、大会そのものへの大打撃だ。4週間はケガが完治する目安。戦列復帰にはそれ以上の可能性もある。バルセロナにとっても痛手となる。

 無回転FKで勝利の立役者となったダビドルイスは、精神的な成熟度を求めた。「アスリート、人間として、夢を成し遂げる機会を失うということは悲しいこと。ネイマールは世界一という夢を追っていた。僕らは彼のためにも、絶対にタイトルを取らなければならない」。

 華やかで、かっこよく、才能あふれるストライカーはもういない。王国ブラジルはチーム一丸となり、死に物狂いで史上最多6度目のW杯制覇を目指す。

 ◆第3腰椎骨折

 一般的に背骨といわれる脊椎は、首に近い頸(けい)椎、背中の部分の胸椎、腰の部分の腰椎に分けられる。腰椎は5個の骨からなっており、ネイマールが骨折したのは真ん中の第3腰椎。Jリーガーでも第3腰椎を骨折した選手は多数おり、08年鹿島時代の内田篤人がACL北京国安戦で第3腰椎の横突起部分を骨折し、全治2~3週間の診断を受けた。ネイマールが第3腰椎のどの部分を骨折したかは明かされてない。