昨年末、実力派俳優のインタビューがたて込んだ。佐藤浩市(55)宮沢りえ(43)岡田准一(36)。それぞれ50、40、30代を代表する人たちである。

 コンスタントにいい仕事をしていることもあって、受け答えはそろって腰が据わっていた。実力派の必須条件なのだろう。現状に満足せず、常に次を見据える姿勢も一致していた。

 佐藤と宮沢は「自分(の演技)に飽きっぽいんですよね」とまったく同じことを言った。佐藤は「あまのじゃくなんです。必ず次はまったく違うものをやりたくなる。それが僕の原動力かもしれないんですけど」と加えた。一方の宮沢は「私は360度どこに振れるか分からない振り子のような感じなんです。じっとしていられない」と続けた。

 V6のメンバーとしてジャニーズ事務所に所属している岡田は、そもそも出演依頼が厳選されて手元に届くのだろう。「(出演作の)チョイスはしたことないですね。ありがたく、いただいた仕事をやらせていただいているだけです」と言う。それでも、このところ時代劇が続き、「SP」以降5年間、現代アクションが無いこともあって「ホントは現代劇をやりたいんですが」と本音も明かした。

 そろって「挑戦」には目がないのだ。佐藤で言えば、三谷幸喜監督の「ザ・マジックアワー」(08年)のトリッキーな演技が忘れられない。成り行きで「殺し屋」のふりをしなければならなくなった男は狂気を目に宿し、ナイフをなめる。他作品でシリアスな役が続いた佐藤の、飛び地のような爆笑演技だった。

 「求められたのがコメディー・タッチではなく、コメディーそのものだったんですね。役作りのために鏡の前でまじまじと自分の表情を確認したのも生まれて初めてでした。それも何回も」と振り返る。まるで楽しんでいるように、弾けて見えた表情は、実は入念に作り込まれたものだったのだ。

 宮沢は近作の「湯を沸かすほどの熱い愛」(16年)で新たな発見があったという。「娘役の2人(杉咲花、伊東蒼)とのやりとりを撮影していて、大事なのは自分が発するものじゃなくて、受け取った人が発するものなんだという実感がありました」。

 脚本を読み込んで、あらかじめ自分で作っていったものより、俳優同士が撮影現場で起こす化学反応のようなものの方が重要ということなのだろう。

 「私にもプランがあったし、彼女たちにもあったと思うんですけど、あきらかにそれを突き抜けた瞬間があった。出来上がった作品を見て、自分でも想像を超えた表情をしていましたから」という。

 余命宣告を受けた母親と娘たちのやりとりは確かに胸に迫るものがあった。「いつもクールな美術のスタッフが『泣いちゃいました』って。現場の期待値も高かったんです」というから、撮影スタッフが体感するほどの化学反応だったのだろう。

 岡田は「海賊と呼ばれた男」(16年)で、希代の実業家の波乱の人生を20代から90代まで演じた。安定した演技力には定評があるが、実はデビュー間もない頃はコンプレックスの塊だったという。「V6には森田剛のように難しいことをさらっとやっちゃう天才がいて、普通の僕はどうしたら、何をやったらいいんだろうって」。

 「木更津キャッツアイ」(07年)で俳優として頭角を現すのはデビューから7年後のことである。確かに感覚的に役柄をものにする森田とていねいに積み上げるように役作りする岡田は今でもV6の中で対照的な存在だ。だからこそ「新しいことを」というチャレンジ精神が人一倍強いのだろう。

 三者三様だが、共通するのは内省的ことである。表現力の豊かさは、どれだけ自分のことを知っているかに比例する、ということを改めて実感した。【相原斎】