◆セッション(米)

 見終わった直後の衝撃が、忘れられない。今年の米アカデミー賞で助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズ演じる名門音大の鬼教官が、バンドにスカウトした新入生ドラマー(マイルズ・テラー)を、1テンポのズレをも許さず、しごく様は、もう狂気の沙汰としか言いようがない。

 3人のドラマーを競わせる場面が、最も象徴的だ。鬼教官は「速く」「役立たず」「田舎者」「くそったれ」などと罵詈(ばり)雑言を浴びせ続け、いすを蹴飛ばし、ドラムを放り投げる。3人がスティックを持つ手とドラムセットは、血に染まった。ホラー映画以上の恐怖感に追い込まれるかもしれない。俳優でドラマーの金子ノブアキも「見終わった後、強迫観念に駆られ、そのままスタジオにドラムをたたきに行った」と吐露した。

 劇中で演奏されるジャズの音楽性を含め、一部で批判的な論調もあり、好き嫌いがはっきり分かれる作品だろう。ただ、アカデミー賞をはじめ、世界で評価されているのも事実だ。まずは1度、見てほしい。見終わった後、語りたくて仕方なくなる…今年、見た中で最も衝撃的な映画に感じた。【村上幸将】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)