◆人生スイッチ(スペイン・アルゼンチン合作)

 ささいなきっかけから、安泰だった人生が一変する-。愚か者たちの転落人生を描いた、ブラックユーモア満載の6作オムニバス。アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされ、カンヌ映画祭のコンペにも出品された話題作だ。

 スイッチといっても、ほとんどのエピソードで、オンになるのは「不幸」のスイッチだ。そして、笑えたり、笑えなかったりする結末が待っている。第1話の最後からして、「ありえないでしょ」と突っ込みたくなる。そんな楽しみ方が王道だろう。

 各作品で、転落のスイッチが入るきっかけが、主人公に共通する精神的な欠陥だった。教訓的な映画としても見られる。身勝手な行動のとばっちりに、わけも分からぬまま散っていく周囲の人たち。散り方にもう少し爽快感が欲しいと思うのは、意地悪だろうか。

 結婚式で夫の浮気がばれた新郎新婦のエピソードを、最後に持ってきたのは秀逸だった。あれだけひどい転落劇を見てきたのに、何となくスッキリしたような気分さえ起きる。夏の超大作ラッシュで、胃もたれ気味の方にお勧めしたい。【森本隆】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)