本格的なターザン映画はクリストファー・ランバート主演の84年「グレイストーク」以来だと思う。バローズ原作に忠実な「グレイ-」ではターザンは運命に流され、悲しかった。

 今作は対照的に運命に立ち向かう。主演アレクサンダー・スカルスガルドは絵に描いたようなイケメン。マーベル作品のコミックキャラで個性を立てているサミュエル・L・ジャクソンが相棒役を務め、強大な悪を相手に共闘する。

 こう書くと初期のターザン映画の「痛快活劇」のにおいを感じるかもしれないが、悪役クリストフ・ヴァルツを始め人物の背景はしっかり作り込まれ、最新のCGが19世紀末の街並みや大自然を再現して肉厚だ。

 ゾウの群れが軍隊を打ち破る空撮風の映像。猛獣が潜む密林の暗闇はひたすら深い。フレームの外側を想像させながら大自然を切り取るようにつないだ旧作には出来なかったことだ。

 密林のエネルギーは高さで強調される。恋人ジェーン(マーゴット・ロビー)が列車に拉致された場面。相棒の「どうやって追う?」の問いかけに「重力さ」とターザン。高低差を生かしたスパイダーマンのようなシーンは圧巻だ。【相原斎】

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