28年前の「ビートル・ジュース」は衝撃だった。往年の怪奇映画のにおいを漂わせながら、先の読めない展開が新しかった。ティム・バートン監督ならではの世界に引き込まれた。

 以後、監督は独自のダーク世界を掘り下げ続けている。嫌いではないが、「ビートル-」のダイナミズムは失われた気がしていた。

 今回は気味が悪くて、思い切り楽しい。監督の原点回帰のような作品だ。

 心を閉ざした少年がやって来たのは孤島にある児童養護施設。母親代わりのミス・ペレグリンと風変わりな子どもたちの中で、少年は安らぐが、何かがおかしい。平穏な生活の裏で、彼らは「不死のパワー」を巡って邪悪な一味と戦い続けていたのだ。

 原作者のランサム・リグズが骨董(こっとう)市で集めた古い写真から紡いだというストーリーを受け、絵画のような背景には不思議な生活のにおいがある。たこのような浮力を持った少女、水中にも広げたアクションシーンにはワクワクする立体感がある。少年が自分の能力に気付き、戦いの先頭に立つ王道ストーリーも気持ちがいい。悪役サミュエル・L・ジャクソンにメリハリが利いている。【相原斎】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)