星組スター十碧れいやが、今日4日に兵庫・宝塚バウホールで開幕する「アルカサル-王城-」で、1年後輩の麻央侑希と組み、ダブルながらバウ公演に初主演する。青池保子氏の同名歴史漫画のミュージカル化で、14世紀のスペインを舞台に国王の座をめぐる異母兄弟の激しい争いを描く。十碧は“悪役”を経験し「1枚殻を破りたい」と話している。14日まで。

 入団8年目になった。

 「(バウ初主演は)純粋に、うれしかったです。ここにいる中で、夢のひとつでもありますし、素直に」

 瞳を輝かせ、表情をクルクルと変える。明るい性格は、新人時代から変わらない。「あははは、そうですね」。また笑う。だが今回の役柄は、いわば悪役。14世紀のスペインが舞台。国王ペドロ1世(麻央)と、十碧演じる異母兄エンリケの壮絶な権力争いを描く。

 目的のために手段を選ばない冷酷な男たちだ。

 「幼い頃から、常にペドロをねたんでいて。生涯、嫉妬心をエネルギーに変えた。どっちの役か分からずに原作を読んだときは、エンリケさんって、本当にひどい人だな~って!」

 自身とは正反対のキャラクターだけに「逆に、やりがいがある」ととらえる。

 「私も、あの人いいな~とか、思うこともありますけど、すぐ割り切っちゃう。ねたみって、私にはない感情。だから、麻央君の『活発で天真らんまんなところはいいな~』とか、うらやましく思って、嫉妬心を育むように(笑い)。私は不器用なので、普段からコツコツやらないと、舞台でいきなりできないから」

 けいこ場での顔つきもきつくなったそうで、自然と麻央とは距離を置くようになった。「でも、この役で私の何かを変えたい、殻を破りたい」。役作りで参考にするのは、所属する星組トップ柚希礼音だ。

 柚希は、仏革命を描いた「スカーレット・ピンパーネル」で、政治闘争に暮れる青年を好演。トップに就き、来年5月の退団まで、近年異例の6年超え在位と、盤石の地位を築いた。「ちえさん(柚希)の悪役の型、目の使い方で研究しています」。その柚希も、前作「The Lost Glory」で轟悠を相手に敵役を演じ、実生活から自身には薄い報復心、嫉妬心を養うよう努めていた。

 「でも、さすがでした。立っているだけでスキがない。考えていることも分かった。目力もすごかった」

 十碧は星組で育ち、トップ柚希を6年見てきた。

 「ちえさんの退団って、まだ想像できない。ずっと、こんなにお手本になるトップさんの組で、ちえさんの背中を見てきたし、今でも『退団するのをやめて!』って、思っています」

 とはいえ、確実にその時はくる。来春には自らも9年目に入り、星組のけん引役が期待される。

 「(7年目までの)新人公演が終わり、自由な時間が増え、今をどうするかで将来が変わる。おけいこはもちろん、私生活でも、ちょっとでも引き出しを増やそうと、映画や舞台を見に行くようにしています」

 星組でも上演した「オーシャンズ11」を観劇。香取慎吾、山本耕史らの芝居から、力まない自然とにじみ出る格好良さを学んだ。

 「宝塚の男役って、加えて品が大切。常に『オーラを出す』みたいなイメージをしていることも大事なんじゃないかなって」

 品-。それは、モデルのミランダ・カーが醸し出す「品」を意識している。

 「悪役は今回やらせていただくので、来年はコメディーもやってみたい」。悪役で殻を1枚、次は喜劇でもう1枚-。丁寧に殻を破り、1歩ずつ確実に歩を進める。【村上久美子】

 ◆バウ・ロマン「アルカサル-王城-」 青池保子氏の歴史漫画「アルカサル-王城-」を、中村暁氏が脚本、演出し、ミュージカル化。物語は14世紀のスペインを舞台に、実在のカスティリア王、ドン・ペドロと、その異母兄であるエンリケの抗争を通し、人間模様を描く。

 ☆十碧(とあ)れいや 4月14日、名古屋市生まれ。幼稚園からクラシックバレエを習い、高校時代に宝塚を知り、一発合格。07年「さくら/シークレットハンター」で初舞台。星組配属。12年「めぐり会いは再び 2nd~Star Bride~」で新人公演初主演。昨年春の台湾公演にも参加。身長175センチ。愛称「れな」「ポコちゃん」。