倍賞千恵子(74)が25日、都内で開催中の東京国際映画祭で行われた、高倉健さん(享年83)追悼特集「高倉健と生きた時代」舞台あいさつに登壇した。「駅 STATION」(81年)など3つの映画で共演した高倉さんについて、昨年11月の死去から約1年を経て、公の場で初めて思いを語った。

 倍賞は、共演した「幸福の黄色いハンカチ」(77年)「遙かなる山の呼び声」(80年)を手掛けた山田洋次監督(84)の言葉を引き合いに高倉さんを評した。

 「(『男はつらいよ』で共演した)渥美清さんと笠智衆さんみたいに、2度とああいうタイプが出ていらっしゃらない俳優さん。山田さんは『すばらしい俳優さんほど、ぜい肉が少ない』とおっしゃる。自信がない人ほど、芝居でいろいろ小細工することを山田さんはぜい肉と言う。それがない人が渥美さん、笠さん、高倉さん。そういう人間でありたいと思う先輩です」

 高倉さんとの出会いは「幸福の-」の記者会見前にお茶を飲んだ時だった。「格好いいなと思いました。眼力のある方で、とても緊張しました」。北海道夕張市での撮影中に雨が降った時、山田監督から「健さんに、兄弟何人か聞いてきてごらんよ」と言われた。高倉さんに走り寄り、腕につかまり“相合い傘”状態で質問したが「いまだに何人と言ったか覚えていない」ほど緊張していた。高倉さんがどういう芝居をするかが知りたくて、ケンカのシーンを見学した時「ドキッとして、すごい怖かった。すごい緊張感で、ここにいて見てはいけない」と思いその場をすぐ去ったという。

 高倉さんの訃報を知った当時の思いを聞かれ「突然にいらっしゃらなくなり、本当にショックでした。しばらく映画やテレビを見るのも嫌だった。映画界にとって、とても大事な方を失った」。そして「死んでも、動いている姿がスクリーンに残る…不思議だな、私たちの仕事って」と、しみじみ語った。【村上幸将】