出身地の熊本市で被災し、19日に帰京した行定勲監督(47)が「張り裂けるような」胸の内を明かした。監督作品「うつくしいひと」が上映される「ショートショート フィルムフェスティバル」(6月)の発表会見でのことだ。

 行定監督は15日夜、「菊池映画祭」の開催に立ち合うため現地入りし、翌早朝の本震に遭遇した。「ホテルの10階にいたので尋常ではない揺れだった。ロビーで夜を明かしました」と振り返る。「うつくしい-」は昨年10月、監督が初めて熊本を舞台に撮影した作品で、被災前の熊本城の雄姿も映されている。「あの堅固な武者返し、石垣が崩れてしまうとは夢にも思わなかった」。16分の短編のこの作品はすでにネット上で公開されている。「震災の後、地元の方から『美しい熊本城を撮っていただいてありがとう』と言葉をいただいた。そう言われる胸が張り裂けるような気持ちになる」と声を詰まらせた。

 現地にはこの映画に主演した、やはり熊本出身の高良健吾(28)も同行。「昨日までスタッフと一緒に給水車で現地を回りました。健吾は今日も回っていると思う」という。

 両親は南阿蘇在住。「何とかルートを探し、会って無事を確認することができました。家はめちゃくちゃでしたが…」。表情を和ませたのも一瞬で「まだ大きな揺れが続いているので、心が休まらない。東京に来ても、ビルが風でミシッとしただけで体が固まった。現地の人たちの不安はいかばかりか。僕に何が出来るのか考えていきたい」と結んだ。