強姦(ごうかん)致傷容疑で先月23日に逮捕された俳優高畑裕太(22)が9日、不起訴処分で前橋署から釈放された。この日までに被害女性側と示談が成立した。同署に集まった取材陣に向かって声を張り上げて「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪。その後、埼玉県内の病院に入院した。弁護士は「違法性の顕著な悪質な事件ではなかった」と主張したコメントを発表した。

 不起訴処分となり、釈放が決まった高畑は、この日午後2時20分すぎ、前橋署玄関前に姿を見せた。白シャツにグレーのスラックス姿。集まった取材陣を前に背筋を伸ばし、まっすぐ前を向いたまま声を張り上げた。「このたびは皆さまに多大なるご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした」。謝罪の言葉を絶叫した後、約30秒間にわたって深々と頭を下げた。目は真っ赤に充血していた。「被害者に何か言葉はありませんか」と問い掛けられると、付き添いの女性弁護士に視線を送ったが、無言のまま、取材陣を凝視するようにして、迎えの車に乗り込んだ。車はそのまま、入院先の埼玉県内の病院に向かった。

 高畑は先月23日、前橋市内のビジネスホテルで女性従業員に歯ブラシを届けるよう呼び出して自室に連れ込み、乱暴したとして群馬県警に逮捕された。女性は右手首関節打撲などの軽傷を負った。県警によると、調べに「欲求を抑え切れなかった」と供述していた。

 高畑の釈放後、担当弁護士がコメントを発表した。コメントは母で女優の高畑淳子(61)の所属事務所のホームページにも掲載された。「(強姦致傷罪は)重大犯罪であり、お金を払えば勘弁してもらえるなどという簡単なものではありません」として、示談成立が不起訴処分の決定に考慮されたと思うとしながらも「一般論として、当初は合意のもとに性行為が始まっても強姦になる場合があります。途中で女性が拒否した場合、その後の態様によっては強姦罪になる場合もあります」とした。事件当時について高畑に話を繰り返し聞いた上で「高畑さんのほうでは合意があるものと思っていた可能性が高く、『部屋に歯ブラシを持ってきて』と呼びつけていきなり引きずり込んだ、などという事実はなかったと考えております」という結論に達したという。

 また、脅迫や暴力を使って抵抗できない状態にして、無理やり性行為をするなど明らかに強姦罪が成立するタイプの事件ではなく「違法性の顕著な悪質な事件ではなかった」と主張。さらに「仮に起訴されて裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件であります」と断言している。

 一方、不起訴処分とした前橋地検は「犯罪の事実の内容や証拠の認定などにもかかわり、総合的に判断して一切お答えできません。犯罪の性質を考えてほしい」としている。