「叛逆のサウンドトラック」(8月7日公開)は、1960年代初めのコンゴ動乱にスポットを当てた異色のドキュメンタリーだ。
60年の総選挙に勝利し、コンゴ共和国の初代首相として、宗主国ベルギーからの独立を果たしたパトリス・ルムンバはなぜ殺害されなければならなかったのか。豊富な資源を巡る大国間の思惑が絡み、青年政治家の理想がゆがめられていく過程が、当時のニュースフィルムから解き明かされる。
この映画の特徴は、米アイゼンハワー政権が「ジャズ外交」として、その手段にも使っていた当時の音楽シーンをフィーチャーしていることだ。サッチモことルイ・アームストロングを始め、ディジー・ガレスピー、ニーナ・シモン、そしてジャズファンにはうれしいジョン・コルトレーンの演奏が、当時の記録映像とともに極上のサウンドトラックとなっている。
米国務省は「親善大使」としてサッチモやシモン、ヂューク・エリントンらで編成された豪華なバンドでアフリカツアーを敢行する。その裏ではCIAの支援によって独立政権を転覆するクーデターが進行していた。各国で笑顔を振りまくサッチモだが、自国では依然としてアフリカ系アメリカ人への人種差別が「合法」である現実を抱え、「誰のために演奏しているのか」と自問する。やがて彼は親善ツアーから離脱する。
米国内ではルムンバ指示を公言するマルコムXがアフリカの独立運動と黒人の人権闘争を結び付けようとしていた。
国連で欧米のアフリカ支配を「植民地主義者」と断罪したソ連のフルシチョフ第1書記は、その後フィリピン代表から東欧に対するソ連支配で逆ネジを食らい、靴で机をたたく。彼のジレンマを象徴する場面だが、作品内のフルシチョフは総じて正義の側の印象が強い。
現トランプ政権からすれば悪魔のような存在である故フィデル・カストロもキューバ革命からまだ1年のさっそうとした姿で国連のあるニューヨークを訪れる。市内でフルシチョフと抱擁を交わすシーンは、世界の正義の軸が、どちらかといえば彼らの方によっていた当時の空気を映し出す。
冷戦の終わりや中国の台頭で大国間の力関係は大きく変化したが、資源を巡る支配構図にそれほど変化がないことを、改めて考えさせられる。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)




