歌舞伎俳優中村吉右衛門(72)が25日、都内で、主演するフジテレビ系時代劇「鬼平犯科帳 THE FINAL」(前編12月2日、後編同3日、ともに午後9時放送)の制作発表に出席し、最後となる同作への思いを語った。

 吉右衛門は「テレビのことに関しては、ぼーっとしておりますが、ああ、終わったんだなという感じです。今、舞台もやっていますので、半分だけぼーっとしております」と語った。

 池波正太郎の人気小説を原作に、火付盗賊改方長官の長谷川平蔵の活躍を描いた人気作。89年7月に第1シリーズがスタートし、09年5月まで第9シリーズが放送され、スペシャル版も05年から15年にかけて12作が放送された。今回の作品で150本目という節目を迎え、フィナーレを飾る。

 28年の歳月には「シリーズの時は忙しくやったし、今回のようなファイナルはじっくりやったものもあり、いろいろです」。気をつけたのは「体調です。私が倒れると撮影が中止になりますので。撮影の時期は舞台が休みの時で寒いときと暑い時ですので」と説明した。

 長谷川平蔵のキャラクターが人生や芸に与えた影響は自分では分からないとしたが、鬼平の生き様には「鬼平みたいに生きられたらいい。憧れます。自分の信念を貫き通せるし、悪を倒すだけでなく、悪の中に善を見いだしたり、助けたり。人間としてこんな素晴らしいことはない。盗賊であろうが侍であろうが同じ人間として見られる人物。平蔵みたいになれたらいいなといつも思っています」と語った。

 同作に出演のオファーを最初に受けたのは40歳の時。1度断り、45歳の時に再びオファーを受けて出演を決めた。「私の40歳はまだこぞっこでした。人生の裏表を知っている大人ではなかった。まだ若造でした。鬼平のイメージは大人のイメージ。とても僕にはできないと思った。まだどうにもと思っていたが、45歳の時には、実録では鬼平は45歳の時に火付盗賊改方の役職についた。記録が残っているので、それを頼りにと思った」と説明した。

 今回の作品の手応えには「私は今までどおりにやった。若いうちのようにはいかなかったが、監督は丁寧に撮ってくれた。作品としては素晴らしい作品になったと思う」と語った。

 また、同作が愛された理由には「理想の上司に選ばれたことがある。この人についていこうと言える人物。それが魅力」と説明した。

 最後は「時代劇は夢を膨らませることができ、現代では考えられない男女の仲、友情を描くことができる。ですから時代劇は無くならないと思っています」と語った。さらに「最後の立ちまわりの時、殺陣師の大の男が寄ってきて、大泣きした。家族的な感覚で撮ってくれたんだなと感じた。そういう素晴らしい方に囲まれて作れた。28年間、感謝しかない。次は誰がやるか分かりませんが、そういう雰囲気はついでもらいたい」と語った。