俳優池田努(37)の画家として初めての個展「Ontology(オントロジー)」が2日、東京・九段の成山画廊で始まった。この日、日刊スポーツの取材に応じ、絵について、役者について、また結婚観についても語った。

    ◆◆◆    

 哲学用語で存在論を意味したタイトルは池田が決めた。

 「役者をやっていると、あれも自分だし、これも自分。自分という実像を追いたい、いろいろなものをはぎとってみたいと思いました」

 自分の顔や体のパーツ、内面を徹底的に見つめ、14点の作品と25枚の線画を仕上げた。体全体を描いた作品は、1枚のキャンバスではなく、パーツごとに描かれている。

 「体全体をそのまま描いたり、服を着せてしまうと、ステレオタイプな作品になってしまうので、そうではない自画像を描きたいと思いました。こんなに自分の顔や体をじっくり描いたのは今回が初めてです。そもそもそんなに自分を見つめませんから。血管、皮膚、筋肉…自分の体はこうなっているのか、このほくろの形が少し変わったとか(笑い)。」

 体をまじまじと見つめることはなかったが、内面はじっくり見つめるタイプだったという。

 「35歳のころ、自分の気持ちを全部並べて、点検しなおしたんです。『この気持ちはこれでいいのか』『そもそも何をやりたいんだ』という自問自答です。20代のころ無条件にがむしゃらにできたことが、自分の考えたいことだけを考えられない時期になっていたんです。自問自答して、俳優と絵しかやらないと決めました。不器用だけどそれしかやらないと決めてもいいと思いました」

 個展期間中の12月17日には38歳の誕生日を迎える。そろそろ40代も見えてきた。所属する石原プロモーション元専務で、10月30日に亡くなった小林正彦さんは常々「役者は40歳から。40歳になって一人前になっていればいい」と言っていたという。

 「40歳になって、さすがプロ、と思ってもらえるような役者、アーティストにならなければいけないと思っています。1日1日を無駄にできないです。専務は『絵を忘れるな』とも言い続けてくれました。亡くなる何カ月か前に電話で話した時も『絵はなかなかのもんだ』と言ってくれました。(個展を)見てもらいたかったです。残念です」と話した。

 同期の徳重聡、金児憲史は結婚、徳重には今年第1子となる女児が誕生した。

 「(徳重は)携帯の待ち受けが子供なんですよ。そういうタイプじゃなかったのに、変わるんだな(笑い)。僕も街で幸せそうな家族を見ると、いいなあ、美しいなあと思います。でも今は、2つのことで手いっぱいですね」

 今後も役者と絵の両輪でやっていく。「役作りをする中で現れる自分を描いてみたい」と、すでに次に描く絵の構想を練っている。個展「Ontology」は24日まで。