カンヌ映画祭で、最高賞パルムドールを競うコンペティション部門で「光」(河瀬直美監督、27日公開)が23日夜(日本時間24日朝)、公式上映された。上映後はスタンディングオベーションが約10分間も続き、主演永瀬正敏(50)が号泣した。

 エンドロールから拍手が起こりはじめ、客席が明るくなると約2300人で満席になったメイン会場のリュミエール劇場が大きな拍手に包まれた。観客は総立ち。永瀬はいすに座ったまま泣いていた。終了後、日本メディアの取材に、永瀬は「あんなに温かい拍手をいただいて…。かっこよく立ち上がろうと思ったけど、だめでした」と振り返った。

 泣き顔は見せたくなかった。同作の試写でも泣き顔を見られたくなくて、そっと席を立ったほど。しかし、この日は泣きに泣いた。弱視のカメラマンを演じた永瀬は、撮影で使われたカメラを渡されると、また顔を上げられなくなった。

 河瀬監督は、永瀬の手を取り、突き上げた。2人が泣きながら抱き合う姿がスクリーンに大写しされ、一層拍手が大きくなった。水崎綾女(28)藤竜也(75)神野三鈴(51)、全員が泣き、それぞれが抱き合って喜んだ。

 上映後、観客が感動していたということを伝えられると、河瀬監督、永瀬、水崎が次々に「最高です!」と言い、ようやく皆が笑顔になった。河瀬監督は「映画は生き物。観客も一体感を感じてくれたのだと思う」と話した。

 レッドカーペットでは音楽担当のイブラヒム・マーロフ氏も含め、皆が手をつないだ。監督、キャスト、スタッフ、会場が一体になった上映となった。

 同作はすでに25の国と地域での配給が決定した。そのうち約3分の1は、カンヌで上映を何度か重ね決まった。授賞式は28日(日本時間29日)に行われる。