「夫婦善哉(めおとぜんざい)」などの映画をはじめ舞台、テレビでも幅広く活躍した俳優の淡島千景(あわしま・ちかげ、本名中川慶子=なかがわ・けいこ)さんが16日午前9時40分、膵臓(すいぞう)がんのため東京都渋谷区の病院で死去した。87歳。東京都出身。葬儀・告別式の日取りは未定。喪主はおいの中川徹也(なかがわ・てつや)氏。

 宝塚歌劇の娘役で活躍後、松竹に入社。1950年に渋谷実監督の「てんやわんや」で映画デビュー。スピーディーで軽やかな演技が評判となり「自由学校」「本日休診」などの風刺喜劇で、新しいタイプのスターの座を確立した。

 「麦秋」(小津安二郎監督)、「君の名は」(大庭秀雄監督)などでキャリアを伸ばし、55年に森繁久弥さんと共演した「夫婦善哉」(豊田四郎監督)の芸者役で大女優へ踏み出した。ぐうたらな男を母性的に見つめる女性を演じ、高く評価された。

 森繁さんとは「駅前」シリーズなどでも共演し、コメディエンヌとしても活躍。59年には2人で「自由劇団」を結成して舞台にも進出した。

 知的な美貌で色気を漂わせる女性像を得意にした初期から、映画「にごりえ」(今井正監督)「鰯雲(いわしぐも)」(成瀬巳喜男監督)などでシリアスな演技にも実力を見せ、毎日映画コンクール賞などを受けた。出演映画は約200本に上る。

 テレビでもNHK大河ドラマ第1作「花の生涯」(63年)や、長谷川一夫と共演した「半七捕物帖」など多彩に活躍。晩年は映画「夏の庭」「GOING

 WEST

 西へ…」や、NHK連続テレビ小説「春よ、来い」などで老境の女性を好演。2010年には映画「春との旅」に出演した。

 1956年に菊池寛賞。88年紫綬褒章、95年勲四等宝冠章を受章。