AMラジオ局「ニッポン放送」(東京)の村山創太郎社長は12日の記者会見で、高層ビルの建設など都市化に伴って深刻化する受信障害を解消するため、FM放送への参入を検討していることを明らかにした。

 FMの電波はAMと比べて建物などの陰にも回り込んで伝わる特性があり、高音質の放送が楽しめるのが特長。同局は、FM局への完全移行ではなく、AMの番組をFMで同時に流すことを想定しているという。

 ラジオ放送をめぐっては、総務省や民放連が現行のアナログからデジタルへの移行を検討。テレビの地上デジタル放送への完全移行で空いた周波数帯(V-Low帯)を利用し、音声以外の情報提供のほか、都市部の難聴対策としても期待されている。

 だが、ニッポン放送がFM参入に前向きな姿勢を示してデジタル化を事実上見送り、ほかにも多額の設備投資を理由にデジタル化に難色を示している局があるため、民放全局でのデジタル化推進は困難となった。

 村山社長はFM参入について「難聴や雑音は経営基盤に関わる。FMでAMの欠点を補えば、新たなファン層の開拓にもつながる」と述べた。