阪神和田豊監督の専属運転手を務める阪神タクシーの清水聖史(きよし)さん(52)が29日、「飛騨の花嫁/思いでにさようなら」でCDデビューを果たした。

 現在では専属運転手と歌手の二足のわらじ生活だが、自身も関大北陽高で甲子園を目指した元球児。弟の稔さん(49)は女子野球日本代表コーチを務め、息子の将太さん(22)は10年春に神港学園(兵庫)で捕手として甲子園出場した野球一家だ。「自分は甲子園に出られなかった」と苦笑いするが、音楽の道でチャンスをつかんだ。

 かつて83年に歌手デビュー。だがヒット曲に恵まれず「内山田洋とクールファイブ」の付き人兼運転手を務めた時代もあった。30代半ばで歌手の道をあきらめて関西に戻り、さまざまな職を経験して10年に阪神タクシー入社。12年に和田監督の運転手を務めるようになった。

 再び歌手デビューのチャンスを得たのは今年。1月にデビュー曲となる「飛騨の花嫁」を作詞作曲。音楽仲間を通じて知り合いであった作曲家川村栄二氏の後押しもあり、再デビューにつながった。阪神タクシーからも、運転手としての業務に支障のない範囲で歌手活動を認められている。

 今では和田監督からも応援されている。通常、運転手から監督に話しかけることはご法度だが、今年5月、監督から話しかけられた際に歌手デビューを打ち明けた。最近では、清水さんのデビューを取り上げた報道について監督から話しかけられることもあるという。日本シリーズと、CDデビュー時が同時期になったことで、監督から「一緒に盛り上がるように(自分も)頑張ってくる」と声をかけられた。清水さんは「もう、うれしくて」と運転手冥利(みょうり)に尽きる思いだという。

 清水さんは再デビューについて「不思議な巡り合わせで、ビックリしている。いったんは止めた音楽を、いろんな人の力をいただいてあらためて始められる。感謝の気持ちを大切にしたい」と喜びを語った。運転手兼歌手として新たな一歩を踏み出す。