8日、華やかに開幕した北京五輪。テレビ、ラジオの実況中継には各局を代表するスポーツアナウンサー28人が派遣されている。映像があるテレビより難しいとされるラジオ放送では、92年バルセロナ五輪以来となるシンクロナイズドスイミングの中継が行われる。いったいどんな放送になるのか?

 担当するNHK三瓶(さんべ)宏志アナウンサー(39)に聞いた。

 国内のラジオ放送でシンクロの実況中継が行われるのは16年ぶり。三瓶アナは「大丈夫かなあ、という気持ちはある。ラジオは緊張するんですけど、今回のシンクロは怖さを感じる放送席になるんじゃないかと思っています」。アテネ五輪やテニスのウィンブルドンなど、これまで経験した大舞台とは、ひと味違った緊張感があるらしい。

 96年アトランタ五輪から3大会ではシンクロのラジオの実況中継は見送られた。これといった理由はないようだが、実況と楽曲だけで競技をイメージするのは難しく、ラジオ向きではないと判断されていたとしても不思議ではない。

 三瓶アナは「こんなこともラジオで表現できるんだ、というところにチャレンジしたい。言葉は悪いかも知れませんけど、シンクロはいかに省略するかが勝負だ、と思っています」。2分50秒~4分の演技時間をしゃべり通したらリスナーは聞き疲れるだろうから、目まぐるしく変わる演技を細かく説明しない。イメージを膨らませられるように、楽曲だけが聞こえる時間もつくりたいという。

 そうやって省いていきながら、一転して見せ場では言葉を尽くす。終盤に長時間組みこまれる日本代表チームの足技のように、ポイントとなる演技が始まったら「少し遅れてもいいから、足がそろっているかというような部分を、言葉を積み重ねて細かく実況したい」という。衣装や表情の美しさも「きれいな衣装というのではなく、あしらわれた花の色は…というように、事実を伝えたい」。メリハリのある実況中継を意識している。

 大相撲名古屋場所の中継を担当した三瓶アナは2日、あわただしく北京入りした。シンクロの中継はNHKラジオ第1で22、23日。「緊張しながらやっているんだな、というドキドキ感も感じ取っていただけたら」と笑っていた。