人類最後のカストラート(去勢歌手)、アレッサンドロ・モレスキの107年前に録音した天使の歌声が、クラシックファンの間で話題を呼んでいることが18日、分かった。

 最後の音源「十字に架けられ」を収録したCD「ALTUS

 奇跡の声」(EMIミュージック)が11日に発売。初回はわずか500枚の発売だったが「あの伝説の歌声がCD発売された」とネットを中心に大反響。16日からの3日間で8000枚のバックオーダーがメーカーに殺到。1000~3000枚の販売が平均的なクラシックCDの世界では超異例の出来事となった。

 モレスキの歌声は、過去にSP盤レコードで発売された記録があり、最近では90年代半ばに映画「カストラート」公開のタイミングでコンピレーションアルバムが発売されたことがある。だが、今回はヨーロッパでカウンターテナー(男性が女性の高音域を歌うこと)がブームを起こしているタイミングで、それが日本にも“飛び火”した格好だ。

 変声期前に去勢手術をすることで、少年の若々しい歌声を永遠に保った「カストラート」。19世紀にローマ教皇が禁止するまで、300年近くも人気ロックスターのように華々しく活躍したという。一方で当時の不衛生な環境下の手術で、命を落とした少年たちもいたという“光と影”の歴史も併せ持つ。「人類最後のカストラート」の高く美しい歌声は40代半ばとは思えぬ若々しさと透明感で胸に迫る。

 [2009年3月19日6時46分

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