歌手桑田佳祐(55)が11日、宮城セキスイハイムスーパーアリーナに超満員の8000人を集め、ライブ「宮城ライブ~明日へのマーチ!!」を行った。10日に続きこの日の公演は、3月11日に発生した東日本大震災から半年の節目と重なった。食道がんを克服し、1年6カ月ぶりとなる本格ライブをこの地に選んだ桑田の躍動が、復興への熱いメッセージとなって、大観衆に届いた。

 ライブは、待ち望んだファンの熱狂とは裏腹に、静かに始まった。特別な演出もなく、歩いて登場した桑田は、深々と頭を下げ、宮城の代表曲ともいえる「青葉城恋唄」を歌い始めた。そして「あれから半年。黙とうをささげさせてもらいます」と直立した。桑田はこの日、地震発生の午後2時46分にもリハーサルを中断した。総立ちの8000人が不動になった。

 桑田は5月、宮城県内の被災地を訪ね衝撃を受け、復興への一助にとライブを決意した。しかし、同アリーナはしばらくは遺体安置所だった。会場はなかなか決まらなかったが、桑田の熱意とスタッフの尽力で、ライブ2日目が震災から半年の節目に重なった。

 黙とう後、ドボルザークの「新世界より」が流れ、大型ビジョンに「復興への長い道のりのほんのわずかな時間ですが、心からステージを楽しんでほしい」という桑田とスタッフ全員の思いが込められたメッセージが映し出された。

 その後は、いつもと変わらぬ熱いステージだった。桑田は昨年8月2日に食道がんの手術を受けた。NHK紅白歌合戦で復帰したが、本格的なライブは、10年3月に日本武道館で行ったイベント「音楽寅さん」以来約1年半ぶり。「(震災で)つらいことがあったと思います。私自身もいろいろありましたが、みなさんの声援もあり帰って来られました。私にとっての再スタートの日にもなりました」と何度も感謝した。

 約3時間、最新曲「明日へのマーチ」から、妻原由子(54)が登場してのサザンオールスターズの曲など全27曲。桑田らしいちょっぴり“不謹慎”なパフォーマンスなど、大病を感じさせず、普段通りに熱唱。「復興」は必ずなされると自らの体で証明した。「復興と、子供たちの未来と、原発の収束を願い」と音頭を取り、一本締めも行った。アンコールのラスト曲「希望の轍」の大合唱が、響き渡った。【笹森文彦】