俳優竹中直人(56)が、異色の時代劇キャラクターに挑戦する。NHK正月時代劇「御鑓拝借~酔いどれ小籐次留書~」(来年元日午後7時30分放送)が制作され、竹中が主人公を演じることが17日、分かった。時代劇主人公にありがちなさっそうとした印象とは程遠い風体のさえない中年の小男を演じる。実は剣の達人という設定で本格的な殺陣に初挑戦する。作家佐伯泰英氏(70)の人気シリーズ小説のドラマ化。同局は竹中に来年正月の「顔」としても期待を寄せている。

 竹中が演じる主人公、赤目小籐次は極貧の小藩の下級武士。酒席の失態を理由に藩を追われるが、たった1人で3藩の大名行列を襲い始め、行列の象徴ともいえる鑓(やり)の先を切り落としていく大胆不敵な行動に出る。背は低く、はげ上がった額に大きな目玉。笑うと愛嬌(あいきょう)のある中年男で大の酒好きだ。一般的な時代劇の主人公と一線を画す設定の異色キャラクターだ。制作するNHK佐野元彦プロデューサーは「原作のイメージにぴったり。主人公の持つ温かみや悲しみを表現できる」と起用理由を明かした。

 原作は佐伯氏の「酔いどれ小籐次」シリーズの第1作。同シリーズは時代劇小説ファンに親しまれ、幻冬舎文庫から全19巻が出版。累計売り上げは390万部を超える。佐伯氏は発表作が次々とドラマ化されている注目の作家だ。竹中の起用は「ぴったりだ」と大喜びしているという。

 ドラマは、命を懸けたその行動の謎をミステリータッチで解き明かしながら、豪快なアクションを大きな見どころとする。主人公は一子相伝の来島水軍流と呼ばれる剣法の達人という設定。竹中は今月下旬の収録開始に備え、本格的な殺陣の特訓を積んでいる。「今後、殺陣のある役柄なら竹中にやってもらいたいと言われるぐらいになりたい」と話しているという。

 竹中はNHK正月の「顔」として期待も寄せられている。放送は家族そろって楽しめる元日夜のゴールデンタイム。佐野プロデューサーは「人の生き方が試されている時代。守るべきもののために、自分の役割や責任を必死に果たそうとする主人公の姿を全国に届けたい」という。竹中も「年齢を重ねた人間の味わいを出せれば」と意図を受け止めている。竹中の新境地として話題を集めそうだ。

 ◆「御鑓拝借~酔いどれ小籐次留書~」

 赤目小籐次は豊後九重藩の江戸下屋敷の厩番(うまやばん)だったが、飲み比べの会で酒を飲み干して寝過ごし、参勤交代で藩主が江戸をたつ時間に間に合わない失態を犯す。浪人になると、3つの藩の大名行列の鑓を奪い、日本橋にさらしてやろうと決意する。行列の剣の達人を倒し、次々と奪っていく。命を懸けた行動の理由は一体何なのか。

 ◆竹中直人(たけなか・なおと)1956年(昭31)3月20日、神奈川県生まれ。92年「シコふんじゃった」や96年「Shall

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 ダンス?」、01年「ウォーターボーイズ」などヒット映画で個性的な演技を披露。NHKでは96年大河ドラマ「秀吉」に主演して平均視聴率30・5%を獲得、00年に司馬遼太郎原作「菜の花の沖」にも主演。91年「無能の人」で監督デビュー後も「東京日和」「連弾」などを監督。