萩本欽一(71)が、軽演劇の再興に立ち上がる!

 今年4月、東京・品川区「スクエア荏原」のこけら落とし公演として、喜劇「おちゃのこ妻妻(さいさい)」を開催することが2日、分かった。1960~70年代に隆盛を極めた浅草東洋劇場と同じテイストの軽演劇を再興。自身のコメディアン人生の集大成第1弾として、火が消えつつある軽演劇の復興、コメディアン育成に全精力を注ぐ。4月5~14日の旗揚げ公演には、風見しんごら欽ちゃんファミリーが集合する。

 芸歴48年の欽ちゃんは、軽演劇の継承を真剣に考えていた。「とうとう誰かに(軽演劇を)伝えることをしなかったな」。浅草で軽演劇を修業し、コント55号で一世を風靡(ふうび)。視聴率100%男とも呼ばれたが、気づけば常設の舞台はなくなり、コメディアンと呼べる人もいなくなった。「コメディアンを名乗れるのは(ビート)たけしが最後でしょうね」。

 浅草の軽演劇のシンボルだった東洋劇場は、99年にバブル崩壊とともに閉館した。だが、欽ちゃんは「いなくなったコメディアンを育て、軽演劇を残さなきゃ」という思いを抱き続けていた。その中で昨秋、品川区から、新施設「スクエア荏原」周辺にある「武蔵小山商店街」活性化を依頼された。浅草の軽演劇が、地元商店街とともに育ったことを知る欽ちゃんは「商店街と共生すべき軽演劇こそ、地域の活性化につながる」という信念の基に動きだした。「浅草の商店街にはかみさん会とかあって、本当に世話になったの。軽演劇と商店街はお互い支え合い、共存しないとね」。

 武蔵小山商店街で生まれ育ったお笑いタレント、タカガキ(24)の熱意にも打たれた。「『軽演劇はどこで修業すればいいですか』と聞かれて。しつこくコメディアン(のこと)を聞いてくるの。気分のいいヤツで、察する勘がいい。3年でモノにしないと。よし、軽演劇、コメディアンの修業をさせる場所を作ってやろうと」。

 こけら落とし公演には、欽ちゃんファミリーメンバーが多数参加する。風見しんご、山口良一、西山浩司らが公演に出演。関根勤、小堺一機、東貴博らがゲスト出演する。「しんごも山口も50を過ぎた。みんなに言うの。『若いのを一生懸命育て上げたら、お前たちを支えるよ』って」。

 公演内容は、軽演劇の継承を目的に、60~70年代の浅草東洋劇場と同じテイストになる。「東京の軽演劇、歴史を伝えないと。いずれは(東)貴博に座長をやらせ、軽演劇を残したい」。欽ちゃんが、師匠の東八郎さんに教わった軽演劇を息子の東貴博へ。そして浅草東洋劇場の軽演劇を品川で。13年、萩本がコメディアン人生の「集大成」に本腰を入れる。【山田準】

 ◆軽演劇

 時事風刺などを取り入れた娯楽性の高い作品で、大衆演劇のうち喜劇を指す。誕生したのは昭和初期、1930年ごろの浅草で、榎本健一(エノケン)、萩本欽一、坂上二郎、渥美清らスターが誕生した。西の吉本新喜劇も「軽演劇」と位置付けることもあるが、東京でも三宅裕司らが一座を旗揚げしている。