<連載「気になリスト」(40)>
ロングラン中の劇団四季ミュージカル「ウィキッド」(東京・東新橋の電通四季劇場「海」)でエルファバ役で主演している雅原慶(28)は、就活を始めた大学3年までは商社を目指していた。
「国際法を専攻していたので、国際ビジネスをやってみたかったんです」
友人に誘われて見た劇団四季ミュージカル「キャッツ」が人生を変えた。
「ジェリーロラム=グリドルボーンにくぎ付けになって、自分もやりたくなった。人生は1度だけだし、やりたいことをやってみようと、賭けに出たんです」
ダンスや歌のレッスンの経験はなかったが、直後からミュージカルスクールに通い始めた。
「1年間やって、ダメだったら就活を再びやろうと考えていました」
いったん火が付いたミュージカルへの思いは消えなかった。就活はせず、卒業した年の夏に四季オーディションを受けた。
「不安に思ったら何もできない。突き進むしかないと思っていました」
合格し、四季研究所に入所した。
「周りには芸大や音大を出た人が多かった。でも、先輩から『今までのキャリアは関係がない。その人の感性、パーソナリティーが芸に出る』と言われて救われました」
演出家浅利慶太氏の「他人の時計を見るな。自分の時計を持ちなさい。人によって成長の速度も違い、いい時期、悪い時期もある。戦うなら自分と戦え」の言葉に勇気づけられた。「マンマ・ミーア!」で初舞台を踏み、「キャッツ」を経て劇団に残る人、去る人をふるいにかける試験で大きなチャンスを手にした。
「試験で『アイーダ』のナンバーを歌ったら、翌日から『アイーダ』の稽古に参加できた。ふるいにかけられるピンチをチャンスに変えることができた」
「アイーダ」のタイトルロールに続き、今年8月から「ウィキッド」に主演している。
「大役をもらったからといって、安心はできない。その電車に乗り続けられるかは自分次第ですから」
就活学生からミュージカル女優を目指して8年。まだ発展途上にある。【林尚之】
◆雅原慶(みやはら・けい)1985年(昭60)1月14日、兵庫県生まれ。07年3月に立命館大法学部を卒業し、08年4月に四季研究所に入所。「マンマ・ミーア!」「ライオンキング」「ミュージカル南十字星」のアンサンブルを経て、09年「キャッツ」のジェリーロラム=グリドルボーンに抜てきされ、出演回数は566回を数える。