17日に心不全で急死した歌舞伎俳優中村獅童(41)の母小川陽子さん(享年73)の葬儀・告別式が20日、東京・南青山の梅窓院で行われ、歌舞伎関係者ら約500人が参列した。喪主の獅童は、号泣しながら母への感謝を述べた。

 4分弱のあいさつ。獅童は泣きっぱなしだった。周囲に愛され、猫にまで愛された母のエピソードを話し、「小川陽子の最高傑作だったと言われる役者になる」と精進を誓った。最後に「皆さまの前で言わせてください」と前置きし、「お母さん…ありがとう」と叫んだ。その万感の思いを感じ、多くの参列者も涙した。

 ひつぎには、愛用の扇、サングラス、交流のあったさまざまな人からの手紙が納められた。弔辞からも陽子さんの幅広い交流がうかがえた。演劇界からは松竹の安孫子正専務、映画界からは「男たちの大和/YAMATO」をプロデュースした坂上順氏、国際空手道連盟極真会館の松井章圭館長も弔辞を読んだ。

 出棺の時にも涙をぬぐっていた獅童だったが、最愛の母を送り出すことができた。5年前の父小川三喜雄さんの葬儀・告別式は、大阪で舞台に出演中で欠席せざるを得なかったが、今回は1人息子としての責務を果たした。同時に役者としての責任から、この日も午後には歌舞伎座で「仮名手本忠臣蔵」に出演した。獅童に期待を込めた「萬屋!」の掛け声は、陽子さんに届いただろうか。【小林千穂】

 ▼主な参列者

 中村嘉葎雄、中村歌六、中村又五郎、坂東弥十郎、中村錦之助、中村勘九郎、前田愛、中村七之助、中村歌昇、中村種之助、尾上松也、尾上右近、中村米吉、富司純子、英太郎、吉川晃司、ザ・グレート・サスケ、山寺宏一、角川春樹、串田和美、コシノジュンコ(敬称略)