ゴーストライター問題の渦中にあり、現在の「全聾(ろう)」状態もウソだと告白した作曲家佐村河内(さむらごうち)守氏(50)が、これまで得た著作権料の返還を免れる方向であることが13日、分かった。

 今回の問題では、桐朋学園大非常勤講師の新垣隆氏(43)が、18年間にわたって佐村河内氏のゴーストライトをしていたことを発表。佐村河内氏もそれを認めているが、音楽の著作権を管理する日本音楽著作権協会(JASRAC)広報担当者によると、(1)新垣氏と合意がある(2)18年の長期間にわたっていることを考慮し、「JASRACが過去にさかのぼって佐村河内氏に支払った著作権料の返還を求める可能性は低い」という。

 佐村河内氏の名義で11年7月20日にリリースされた「交響曲第1番

 HIROSHIMA」は、クラシックでは異例の18万枚の出荷があり、同作の売り上げやコンサート使用料などで既に数千万円を得たと推定。他に映画音楽、ゲーム音楽なども多数手掛けたことになっており、総収入は1億円超とみられる。一方、新垣氏は18年間で20曲以上を代作し、約700万円を得たことを明かしている。

 ただ、「全聾ながら自ら作曲している」と装っていた佐村河内については今後、CDや楽譜などを扱う会社などから損害賠償請求があるとみられ、展開によっては著作権料で築いた財産を差し押さえられる可能性もある。しかも、今後については、本当の作曲者の新垣氏が、「放棄する」と宣言していることから、それらの楽曲が「著作権なし」として扱われることが濃厚。関係者によると、現在は両氏の代理人が「曲を利用する人に迷惑をかけないように話し合っているところ」といい、JASRACは「権利の帰属が明確になるまでは、(佐村河内氏作品の)利用許諾を留保する方針」としている。