第24回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が5日決定し、石原裕次郎賞は「探偵はBARにいる」が選ばれた。28日に東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる授賞式で、裕次郎夫人のまき子さんから賞金300万円が贈られる。

 ススキノの気まぐれな探偵が、ナゾの美女の依頼から事件に巻き込まれる娯楽大作。昭和の日本映画の王道である極上のエンターテインメント性を存分に追求。キャラクター性、娯楽性、時代性にこだわり抜いたことが受賞の決め手となった。主演の大泉洋(38)は「信じられず、思わずにやついた」と喜んだ。石原裕次郎新人賞は該当者なしだった。

 “探偵”の大泉にも石原裕次郎賞受賞だけは読めなかった。「仰天報告がある!」。マネジャーの興奮した声に「いい情報だったためしがない」と警戒しながら受けた朗報だった。「信じられなかったが、にやついたのを覚えています」。東映社員監督の橋本監督(43)も「賞をいただくような映画じゃないと思っていた。幸せです」と声を弾ませた。

 作家東直己氏による「ススキノ探偵シリーズ」の第2巻目「バーにかかってきた電話」が基になった。札幌・ススキノの探偵“俺”(大泉)が1本の電話で女性(小雪)の依頼を受け、事件に巻き込まれていく。2月中旬に極寒の北海道で約1カ月間、ロケを敢行。アクション初挑戦の大泉は凍った雪で爪をはがしながら雪山にたたきつけられるなど、寒中でアクションに挑み続けた。「肉離れで激痛が走り、『パンチ打てないんですけど』と訴えたら、『じゃキックに変えて』と。一方で監督たちは、毎晩飲んでジンギスカン食べてた」。この大泉の恨めしげな告発に、橋本監督は「寒い中で苦労させて心が痛む」と頭をかいた。

 酒好きで美女に弱い探偵、相棒、ナゾの美女依頼人、名曲、しゃれたバー、アクション、アウトロー…。「探偵は-」には昭和の古き良き時代のエンターテインメント性が存分に詰め込まれている。小粋でダンディーで、ススキノや小樽など北の大地の魅力も余すところなく映像化。このスケールの大きさが、裕次郎賞に値すると評価された。

 北海道生まれの大泉は「裕次郎さんの面影を感じる映画。ただある雑誌に、主演は大したことないと書いてあった」と笑わせた。橋本監督は「(裕次郎さんの出演作は)僕たちの目指すシリーズ映画の原点。毎年(裕次郎賞を)取れるように頑張る」と受賞の重みを感じていた。【山田準】

 ◆探偵はBARにいる

 札幌・ススキノのバーを根城にする探偵(大泉洋)はある日、謎の女性から不思議な依頼を受けた。「ミナミという弁護士に、去年の2月5日にカトウはどこにいたか」と聞いてくれ、という内容だった。相棒の高田(松田龍平)と調査に乗り出す。続編の製作が決まっている。