かつて東洋一の規模とうたわれた東京・日活調布撮影所の縮小が決まり、敷地の半分を使ってマンションが建てられることが決まった。同撮影所と縁が深い三池崇史監督(53)は、取り壊される一帯を利用して巨大オープンセットを組み、アクション映画「極道大戦争」(来年公開)を撮影した。三池監督が思いを語った。

 今年春、撮影所内に、全長約100メートルに及ぶ巨大オープンセットが建てられた。昭和のにおいが残る裏路地を思わせる、さびれた商店街が再現された。セット内で激しいアクション場面などを撮影した。

 撮影所敷地内に大規模なオープンセットが組まれるのは、最近では異例のことだ。8つあるスタジオのうち3つがなくなる。オープンセットは、いずれ取り壊すスタジオや倉庫を“有効活用”した。撮影所の縮小が実現を後押しした。三池監督は「逆手に取った。なくなってしまうのなら、とことん使い切るということです」という。

 同撮影所は、三池監督にとって思い入れの深い場所だ。映画界に飛び込んだばかりの80年代初め、ドラマ「ザ・ハングマン」シリーズの収録が同撮影所で行われ、フリーの助監督としてハードな毎日を過ごした。「休みなしで、どんなに早くても午前2時前に帰ることはなかった。気を失うようにスタジオの外で寝ていて、トラックにひかれそうになったこともありました」と笑う。取り壊されるスタジオも「ほとんど住んでいたような感じ」というほど長い時間を過ごした場所だ。当時は別のスタジオでドラマ「西部警察」の収録も行われており、「石原プロの方々がいてにぎやかな雰囲気でした」。

 映画界もデジタル化が進み、コンパクトなスタジオでスケール感ある撮影が可能になった。日活も撮影所半分を売却し、新時代に向けた改革を進める。同撮影所は1955年(昭30)に全体が完成し、9万9000平方メートルという広大な敷地と最新の設備で当時「東洋一の撮影所」とうたわれた。石原裕次郎さんをはじめ、小林旭、宍戸錠、浅丘ルリ子、吉永小百合らトップスターが育ったが、79年に敷地の約半分が売却されている。

 三池監督は、さらなる縮小について「さみしいですが(映画界が)新しくなっていくためには壊していくことも必要」と受け止める。「自分が鍛えられた場所がなくなる最後に撮影できたのは何かの縁でしょう」。スタジオ跡地は、マンション建設の準備が進められている。【松田秀彦】