山田洋次監督(83)が「男はつらいよ」シリーズ終了後、21年ぶりに本格的な喜劇映画を製作することが24日、分かった。タイトルは「家族はつらいよ」。13年「東京家族」の出演者8人が再結集する。熟年離婚騒動に揺れる家族の喜怒哀楽や人情をユーモラスに描く。16年公開予定。

 タイトルについて山田監督は「悩んだ。このタイトルを一番付けたかったけど照れくさい。僕の映画をからかう、オマージュにしても構わないだろうと思い切ってつけました」という。

 結婚50年を迎えた夫が、妻に誕生日プレゼントで欲しいものを聞いたところ、離婚届を差し出されてしまったところから始まる。夫妻を橋爪功と吉行和子が演じ、離婚話に揺れる家族を西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優が演じる。

 山田監督は配役について「信頼関係を持つ人たちと一緒に仕事できることは、とても楽しい。作り上げたアンサンブルを逃すのはもったいなかった」。物語着想のきっかけも「東京家族」の撮影現場で実話をネタにした雑談からヒントを得たという。「今は非常に重苦しく暗い時代。だからこそ本気で笑いたいと思うけど、テレビの安っぽい笑いしかない。人間のおかしさを正直に伝え、『愚かなのは俺だけじゃないんだ』と笑い、少し悲しくなる。僕にとって喜劇はそういうもので『寅さん』もその気持ちで作った」。

 既に撮影に入っている。「今、日本は家族みんなで集まって泣いたり騒いだりしない。幸せな家族なんだと思いながら演出しています」。山田監督が考える本物の笑いで家族とは何かを問いかける。【村上幸将】

 ◆「男はつらいよ」シリーズ

 山田監督が原作・脚本を担当。フジテレビ系で68年から放送された連続ドラマをもとに、松竹で69年に映画化。主演の渥美清さんが死去した95年まで全48本を公開。再編集版「寅次郎ハイビスカスの花特別篇」が97年に公開。