統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)の審議入りで、賛成派と反対派の綱引きが続いている。与党内では推進する自民党、慎重姿勢の公明党で意見が割れていたが、今年に入り公明党の態度が軟化。与党側では審議入りへの態勢が整った。これを受けて、今月3日に行われた賛成派による学会には約400人が集まった。

 カジノ法案が持ち上がったのは14年。安倍首相自らシンガポールのIR施設2カ所を視察、「(アベノミクスの)成長戦略の目玉」としていた。海外カジノディーラーでカジノ関連コンサルタントを手掛ける古賀よしこ氏も「最近ではあの年が一番盛り上がった」と振り返った。

 あれから2年。1度は廃案になっただけに、久々に出た審議入りの動きに、賛成派のテンションは高い。「今年の学会は海外事業者らも参加して、長時間話し合った。本来はライバル同士の地方自治体や企業も、今は『日本にカジノを』でまとまっている」という。 賛成派のPRポイントは大きな経済効果。招致に積極的な横浜市は、昨年3月にカジノ事業で年間収益約850億円との試算を出した。日本での開業を見据え、来月にはユニバーサルエンターテインメント岡田和生会長が、フィリピンに「オカダ マニラ」を開業予定。来年4月にはセガサミーホールディングスが、韓国企業と共同で「パラダイスシティ」を、韓国・仁川にオープンする。関連企業の動きは活発だ。

 一方で、課題も多い。ギャンブル依存問題は、反対派が指摘し続けるポイントだ。14年には、厚生労働省の調べで、成人の4・8%にあたる536万人が依存の疑い、という数値も出た。古賀氏は「賛成の人々も依存については認めている。その上で依存アカデミーなどを作り、共存の道を模索するべき」としている。

 今国会は延長がなければ11月30日まで。スケジュールを考えれば、審議入りさせて、来年の通常国会で継続、というのが現実的なシナリオだ。だが2年前と同じく衆院解散で廃案、という繰り返しを不安視する声も少なくない。仮に審議入りしたとしても、一筋縄ではいかないのが実情のようだ。【小松正明】