神奈川県小田原市で07年以降、生活保護受給者の自立支援を担当する市職員ら64人が、英語で「不正受給はくずだ」などとプリントされたジャンパーを自主製作し、受給者の自宅などを訪問していたことが17日、分かった。

 同市生活支援課の職員らは受給者宅で相談に応じるケースワーカーや庁内勤務の指導員で、28人が現職。職員の大半が着用していた。市福祉健康部は、日刊スポーツの取材に「ジャンパーがあるのは知っていたが、文言までは確認していなかった」と釈明。一方で「内容があまりに不適切」として16日から着用を禁止。部長以下7人が、副市長から管理監督責任を問われて厳重注意処分を受けた。

 ジャンパーは黒地で、前面には欧州の名門サッカークラブのロゴを模した黄色のマークが貼られている。ローマ字で「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」と記されているほか、漢字の「悪」にバツ印がデザインされている。背面には「我々は正義」などといった文字がデザインされている。

 ジャンパーは生活保護の担当者が自費で作製。市によると、製作のきっかけは、07年7月に担当職員2人が受給者にカッターナイフで切りつけられる傷害事件が起きたことだったという。

 市福祉健康部は「発案者によると、不正や悪に負けないようにという意識向上のために、内部向けに作ったもの」で、着用したまま外部で活動する予定はなかったという。今後、市の生活保護について「生活困窮者に対しては、必要に応じて適切な支援をしていく」とした。

 生活保護の相談を受けているNPO法人POSSEの渡辺寛人氏は、小田原市の事案について「市の職員が、受給者を疑っているというメッセージ」と指摘した。「生活保護の不正受給は、受給者のうち0・5%程度」とし、「受給できている人は有資格者の2割程度。残り8割は保護が受けられていない」との現状を示した。行政は、積極的に受給者を増やそうという働き掛けに乏しいと分析。「貧困は自己責任という差別意識がどこかにあるのでは。あの文言を見れば、利用している人は『自分も疑われている』と傷つく」と話した。