下劣な不倫行為「ゲス不倫」という言葉は昨年定着し、今年も不倫疑惑報道が相次いでいる。今井絵理子参院議員、女優斉藤由貴、山尾志桜里衆院議員…。次々と著名人の名前が挙がる。なぜ不倫に走るのか。不倫する男、不倫する女、不倫をされた配偶者など、当事者1000人以上への取材を18年間続け、「人はなぜ不倫をするのか」(SB新書)の著書があるフリーライター亀山早苗氏に、話を聴いた。

 -今井氏は一線を越えていないと言い、斉藤は当初、不倫を否定した。山尾氏は、男女関係はないとした。一連の当事者の発言を聞いて、どう感じたか

 亀山氏 何を不倫の「一線」としているのかによります。ダブル不倫のある主婦は、性交類似行為までと言う。避妊具の有無と言う人もいる。一線は千差万別です。裁判では、ホテルに一緒に入る写真を探偵に撮られたら、不貞行為があったとみなされる。いわば「みなし一線越え」です。真実は、当事者2人にしか分かりませんが。

 -不倫では、肉体関係は大きな要素ですか

 亀山氏 ものすごく。不倫相手に求めるものは男性が肉体、女性が恋といわれてきたが、今は逆転している。男性が心のつながり、女性はまず肉体。不倫中の女性たちに、彼がED(勃起不全)になったらどうすると聞くと「会ってる意味がない」と言います。

 -18年間取材してきた中で、変化はありますか

 亀山氏 ここ7~8年で、結婚と恋愛は別という考えが広がった印象がある。スマートフォンの発達が大きい。どこでも男女がつながれる。もはや、不倫助長ツール(笑い)ですが、逆に不倫が発覚しやすい背景でもある。あるアプリは、外部からスマホを遠隔操作できる。キスの自撮り画像も流出してしまう。

 -傾向として、多い世代は

 亀山氏 40代半ばです。子どもに手が掛からなくなり、ふっと自分を見つめ直す。特に女性は更年期を前に焦る。再び社会に出る人もいて、そこに恋愛も入ってくる。欲望に正直なバブル世代でもある。既婚者の恋愛は、結婚という目標がなく、子どもみたいに「邪念」がないとも言う。だから50代でもパンツかぶっちゃう(笑い)。欧州には、恋は子どもを大人にし、大人を子どもにするという格言がある。

 -人はなぜ、不倫をするのでしょう

 亀山氏 本能では求めるのが、人の本性ではないか。結婚に縛られていることに、社会的な意味を感じる人には抑制が働きますが、あまり感じない人では「本能」が上回るのではないでしょうか。

 -不倫自体を否定も肯定もしない理由は

 亀山氏 人間にとって一番大事なのは、自己判断の自由です。法を犯さない限り、自由を最大限尊重したいから、良くも悪くも何も言わない。

 -不倫報道が多いですね

 亀山氏 男と女がいれば、不倫は一定数あるもので、昨年来、報道が増えているのだと思います。「ゲス不倫」と言っても、ゲスなのは大衆で、不倫報道は注目される。私も見ちゃいます。ただ、この流れが続けば、密告社会みたいで怖いとも思う。ただ、不倫は誰にでも起こりえます。する人は、マメに秘めること。別にお勧めはしませんが(笑い)。しない人は、うかつに手を出さないことです。痛い目に遭いますから。(聞き手・清水優)