昨年6月、神奈川県内を走行中の東海道新幹線最終電車で起きた3人殺傷事件で、乗客1人に対する殺人罪、2人への殺人未遂罪などに問われた住所不定、無職の小島一朗被告(23)の裁判員裁判で横浜地裁小田原支部(佐脇有紀裁判長)は18日、無期懲役(求刑無期懲役)の判決を言い渡した。被告は判決後、公判で希望した通りの判決に万歳三唱。刑務官に取り押さえられた。

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「被告を無期懲役に処す」。裁判長の判決を小島被告は座ったまま、身動きもせず聞いていた。判決理由の朗読後、裁判長から控訴ができることを告げられると、小島被告は顔を小さく横に振って拒否。突然立ち上がると「控訴はしません。万歳三唱します」と大声で宣言した上で、両腕を大きく上に上げながら「バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!」と言い放った。裁判長が「元の席に戻りなさい」と強い口調で制止したものの、被告はやめることはなく、3度目の万歳で4人の刑務官に取り押さえられた。

被告はこの日も左胸に円の中に「官」と手書きしたとみられる上下灰色のスエット姿。被告席に戻っても、傍聴席にまで聞こえる声で「明日週刊新潮が出ますので」と弁護側に伝えるなど、興奮を抑えることができなかった様子で反省したそぶりは見せなかった。公判で「無期懲役で永遠に刑務所に入っていたい」と話しており、“希望通り”の判決に笑顔すら浮かべ「ありがとうございました」と言って退廷した。

小島被告は11月28日の初公判からこの日を含め6回にわたる公判で、過激な発言を繰り返してきた。起訴内容を認めた上で「3人殺せば死刑になるので2人にしておいた」「有期刑だったら出所後に必ず人を殺す」などの発言を繰り返し、被害者や遺族への謝罪の気持ちも「一切無い」と言い切っていた。

裁判長は判決理由で「『一生刑務所に入るため』という動機は、あまりにも人の命を軽視し身勝手だ」と指摘。無期懲役は被告の希望通りにはなるが、量刑について(無期懲役より軽い)「有期懲役(の選択肢は)は全くない」と理由を説明した。

裁判長は死刑は回避した理由について、被告が物事を被害を受けたように受け取る傾向が強く、思いこむと修正が困難な「猜疑(さいぎ)性パーソナリティー障がい」と診断されたこと、まだ若いこと、前科がないことなどを挙げ「死刑に処することがやむを得ないとまでは言えない」とした。その上で「刑務所での服役の日々を送らせ、重刑の現実に直面させる」と言い、閉廷した。【佐藤勝亮】

◆東海道新幹線乗客殺傷事件 起訴状によると、昨年6月9日午後9時45分ごろ、東京発新大阪行きの「のぞみ265号」(16両編成)が新横浜~小田原間を走行中、12号車で小島一朗被告が20代女性2人をなたで襲って重傷を負わせ、止めに入った兵庫尼崎市の会社員、梅田耕太郎さん(当時38)の首や太ももをなたとナイフで切り付けて殺害したとしている。