安倍晋三首相は4日、立憲民主党の枝野幸男代表ら野党5党首と国会内で個別に会談し、新型コロナウイルス感染拡大に対応するため「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正と、早期成立に協力を要請した。首相は「国家的危機に与党も野党もない」と「ワンチーム」を強調したが、野党は1月末から特措法適用を求めていた。いっしょに法改正することで責任を“分散”したい政権の思惑もにじむ中、対応は今回もやっぱり後手後手だった。

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「建設的なご意見をいただき感謝したい。厳しい状況だが与野党で協力し、何とか克服したい」。約1時間半、立憲民主、国民、日本維新の会、共産、社民の各党首と会談した首相は終了後の取材に、低姿勢で与野党協力による法改正への意欲を示した。

16年4月の熊本地震以来、約4年ぶりの異例の個別会談は「野党の声に耳を傾ける」(関係者)姿のアピールだ。首相は、特措法が新型コロナウイルスに対応できるよう「新型コロナウイルス感染症」を追加した上での、法改正に協力を要請。政府与党は来週の法案成立を目指す。施行されれば、政府は私権制限を伴う緊急事態宣言を発令できるが、立憲民主党の枝野幸男代表は会見で、首相が「出す際には事前に相談する」と述べたと明かした。

新型コロナウイルスの特措法適用は野党が1月末から求めており、遅きに失した格好だ。枝野氏も法案審議への協力を表明しつつ「私どもは1カ月以上前から、特措法は新型コロナウイルスにも適用できると申し上げてきた」と、くぎをさした。首相は「未知の感染症でないと適用できないというのが政府の解釈」と述べたが、野党を巻き込む法改正で責任を分散させたいのではと見る向きもある。

現行の特措法が、首相が何度も「悪夢」と呼ぶ民主党政権で成立したことも、改正にこだわる背景ではないかと、うがった見方も。法案が成立した12年4月の参院本会議採決を、当時野党だった自民党は国会審議の混乱で欠席している。

官邸で取材に応じた首相は、冒頭の質問に答えると執務室に戻ろうとしたが、別の質問が飛ぶと、振り返って応じた。最後は、後手後手ぶりをただす質問。首相は明確に答えず、質疑を終えた。【中山知子】