来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表として出場要請していたイチロー外野手(39=ヤンキースFA)が、辞退する可能性が高いことが16日、分かった。関係者によれば既に意向を固めており、近日中に日本野球機構(NPB)へ正式に伝える見込みだ。招聘(しょうへい)に尽力していたコミッショナー特別顧問のソフトバンク王貞治球団会長(72)はこの日、事実上の断念を示唆。侍ジャパンは、キューバとの強化試合で完封発進した。

 浩二ジャパンが、また激震に見舞われることになりそうだ。大会2連覇の中心だったイチローが、苦渋の決断を下すことが濃厚になった。NPB側への正式な返答を保留しているが、最終返答は「NO」となることが確実であることが判明。出場交渉の陣頭指揮を執ってきた王会長はこの日、「我々の手の届くところじゃないから」と、断念を示唆する発言をした。

 強い責任感と使命感からか、苦悩は深かったようだ。イチローは今季途中でマリナーズからヤンキースへ移籍。現在はヤ軍残留を基本線にしているとみられるが、来季の所属先は未定。自身の野球人生の転機となったオフに侍ジャパンからオファーを受けたが、熟考。周囲の関係者によれば「不参加」で意思を固め、近日中に正式表明するもようだ。

 侍ジャパン側も、イチロー不在を想定して急ピッチで準備を進めている。メンバー正式決定前に、山本監督は巨人阿部をWBC本番の主将に指名。本来は経験豊富でリーダーシップもあるイチローを据えてもおかしくないが、阿部中心のチームづくりを敢行している。水面下ではメンバー選考の練り直しを行っている。

 ダルビッシュ、岩隈、青木、川崎に続き、出場を希望していたメジャー組6人の中で、野手陣の精神的支柱となるキーマンも欠けることになる。ヤンキースからFAとなった黒田も所属先が決まっておらず、出場が厳しい状況で、メジャーリーガーは全滅が濃厚。王会長は「まだ彼(イチロー)自身の去就が決まらないから。彼はもう2回も(世界一に)貢献してくれているからね」と、過去のWBCでの功績をたたえた上で、今後は静観する構えだ。日本代表をけん引してきたイチローを欠くことで、浩二ジャパンは本格的な世代交代に突入する。チーム編成と並行しながら、大会3連覇という高い壁に挑む。

 ◆イチローのWBC

 第1回大会(06年)は米国戦で先頭打者本塁打を放つなど、全8試合で安打をマーク。最後の2試合では3番を任され韓国との準決勝で3安打、キューバとの決勝で2安打。第2回大会(09年)は韓国との決勝で延長10回、2死二、三塁から決勝の2点適時安打を中前に放った。