シンデレラボーイから次代のエースへ-。昨年ブレークした中日若松駿太投手(20)が、3つの新年の誓いを立てた。「2年連続2桁勝利」、「防御率マエケン超え」、そして「優勝」。初勝利から2桁勝利まで飛躍した昨季が自信の源。飛竜のシンボルとなって、低迷打破を掲げるチームを押し上げる。

 中日若松は3年目の昨年、6月2日西武戦(ナゴヤドーム)でのプロ初勝利から2桁勝利まで一気に駆け上がった。

 「1年間1軍でフルで投げられたのが初めてだったので、勝つことだけを考えていました。悔しい思いもたくさんしたけど、あらためてプロ野球はすばらしいなと思いました」

 23試合に登板し10勝4敗、防御率2・12。8月には4連勝し、初の月間MVPも受賞した。抜群の安定感を誇った。16年の先発ローテを支えるであろう4年目右腕は3つの決意を口にした。

 「2年連続2桁勝利。最低限、昨年の勝利数は。そして超えたいです」

 まずは昨年以上の白星を積み重ねる。防御率は15年の広島前田を射程内にとらえている。

 「前田さんの防御率が僕の1つ上(2・09)だったんですよ。15年の前田さんは、前田さんの中でも調子が悪かった方だと思うんですけど、その数字を抜きたいなと思います」

 規定投球回には3イニング足らなかったため、10傑には入っていない。しかし、セ・リーグ全投手のランキングでは、若松の上には前田の名がある。明確な目標が見えてきた。10月2日にはマツダスタジアムで前田と投げ合っていた。

 「実際に打席で見たら、特にスライダーはすごかった。回転を見てスライダーだと分かっているんですけど、本当にベース上に来ないと曲がらない。あれ、真っすぐ? とか思っちゃう。あらためて前田さんのすごさを感じました」

 若松が立ったのは3打席。1打席目、2打席目ともに、3球で空振り三振。3打席目は必死に犠打を決めた。日本のエースの大きさを目の当たりにした。

 「チーム的には僕が入団して3年間、ずっとBクラスなので。Aクラスで優勝争いをしたいですね。そして優勝したいです」

 体験したことのない優勝争い、そしてリーグ制覇。未知の世界だが、若松の胸が高鳴っている。成長曲線は計り知れない20歳。戦列の先頭に立つ姿を思い描き、投球術を磨いていく。【取材・構成=宮崎えり子】

 ◆若松駿太(わかまつ・しゅんた)1995年(平7)2月28日、福岡県久留米市生まれ。小4で野球を始め、祐誠2年まで投手兼内野手。3年夏は福岡県大会2回戦敗退。土木科で学び、小型車両系建設機械の資格を取得。3トン以下の重機を操ることができる。12年ドラフト7位。プロからの調査書は中日だけ。担当スカウトで14年に亡くなった渡辺麿史さん(享年57)が選んだ背番号61を背負う。1軍デビューしたプロ2年目の14年は7試合に投げ0勝1敗。180センチ、75キロ。右投げ右打ち。

 ◆中日投手の近年の連続2桁勝利 大野は13、14年の各10勝に続き、昨季も11勝と3年連続2桁勝利を継続中。近年では、吉見が08~12年に5年連続で10勝以上。球団最長は杉下茂の9年連続(50~58年)。なお、プロ初勝利の年から2年連続2桁勝利となると、近年では岩瀬が新人年の99年、翌00年に10勝ずつ挙げた例がある。