巨人がDeNAから国内フリーエージェント権(FA)を行使している山口俊投手(29)の獲得に成功した。1日、山口から入団の意思を伝えられ、中日との争奪戦を制して4年総額8億円とみられる大型契約で合意した。ソフトバンクから国内FA行使の森福允彦投手(30)もこの日、3年契約総額4億円超で合意。トレードで日本ハムから加入の吉川光と3人合計で今季20勝分が加わり、来季3年ぶりリーグ優勝への推進力となる。入団会見はともに5日の予定。(金額は推定)

 吉報を知らせる電話が鳴り響いた。昼ごろ、山口本人から堤GMの元に連絡が入った。「巨人軍の方でお世話になりたいと思います」。11日の初交渉では「前向きに考えさせてもらいます」と好感触を得ていたが、そこから争奪戦で中日の猛追を受けていた。それでも粘り強く当初の3年総額6億円から4年総額8億円に上方修正した模様で、最終的には序盤から本命とされていた盟主の元さやに収まった。

 今季11勝、5完投の本格派右腕のハートを射止め、堤GMは「非常にうれしい。待ち遠しかったし、感謝している。ローテの一角として期待している中での獲得交渉だったので」と喜んだ。夕方には森福から入団を受諾する連絡が入った。交渉解禁日の11日にダブルアタックをかけてから約3週間。待ち焦がれていたが、せきを切ったようにFA戦士の獲得に成功した。百戦錬磨の中継ぎ左腕の加入に「決断に感謝する。左のリリーフ投手として大きな期待を持っている」と話した。

 25年ぶりのリーグ優勝を許した広島打倒の投手陣が完成した。今季は山口俊が11勝、森福が2勝、日本ハムからトレードで加入の吉川光が7勝。机上の計算だが今季71勝に3人の計20勝が上積みされれば91勝。広島の89勝を上回る。20勝以上の補強に成功したのは過去4度。うち3度が優勝に輝いている。11年オフは8勝の杉内、19勝のホールトンを獲得し、12年は2人が計24勝を挙げる活躍で日本一に結びつけた。

 大補強が投手陣を活性化させ、内海、大竹寛、山口鉄らベテランを刺激し、チャンスが限定される若手の競争心をあおる。高橋監督は交渉時に「一緒に強いチームを作って優勝しよう」「来年の優勝に向けて力を貸してほしい」と熱い思いを2人に伝えていた。巨人の情熱が来季の結果となって表れる。【広重竜太郎】

 ◆巨人の投手大補強 2リーグ制後、オフにシーズンで20勝以上(国内プロ野球)を挙げた投手の補強を行ったのは過去4度。64年オフに27勝の金田を獲得し、65年は優勝。05年オフは14勝のパウエル、ともに3勝の豊田、野口を獲得したが、06年は3人で計11勝に終わり、4位に沈んだ。07年オフは16勝のグライシンガー、3勝のクルーン、1勝の藤田が加わり、08年はグライシンガーが2年連続最多勝利となる17勝をマークし「メークドラマ」で大逆転優勝した。