日本ハムは今季、投手起用の新戦術「ショート・スターター」を導入している。先発投手が打者一巡をメドで交代し、第2先発へ継投して試合をつくる方策だ。開幕からの9試合中、3試合で採用。いずれも負けと結果に恵まれないが、栗山英樹監督(57)は「やり通す」と明言する。従来の先発投手の概念を覆す戦い方の狙いに迫った。

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5日西武戦の試合前。東京ドームの一塁側ベンチで報道陣に囲まれた栗山監督は言った。「オレ、やることは、やるからね。自分がチームのためになると思うことは、やり通すから」。4日楽天戦(楽天生命パーク)で斎藤を「ショート・スターター」として起用も初回に3失点。出ばなをくじかれて大敗した一夜明け。かつて大谷の投打二刀流を批判覚悟で推し進めた知将の決意は、全く揺らいでいなかった。

日本ハムが採用する新戦術の狙いは何か。栗山監督は「この形だったら結果を出しやすいなど、選手それぞれに特長がある。それを、うまく“足し算”することを考えているだけ。そうすると戦力として幅が広がる」と力説した。

ここまで2試合にショート・スターターとして起用された加藤は、2日楽天戦で3回無失点、中3日で臨んだ6日西武戦では2回無失点と結果を残した。「本当に試合の入りがうまい」と指揮官も絶賛するように、どの投手も苦しみやすい立ち上がりを加藤は得意とする。

一方で、昨季は先発した17試合の平均投球回数が5・8回。相手打線との対戦を重ねると弱さを見せた。ならば、ストロングポイントを前面に押し出すという発想が新戦術の起点。「第2先発」の適性がある投手を見極める課題もあるが、今季から出場選手登録の人数が1人増えたことも生かせる作戦でもある。

球団は限られた補強費の中で「スカウティングと育成」を編成方針に掲げる。栗山監督は「選手がいっぱい取れるチームなら必要ないけど、今いる選手たちを最大限に生かすには、そういうやり方しかないと思う」。現状で先発完投型は上沢、有原のみ。ショート・スターター戦術をいかに早く熟成できるかが、シーズン序盤の戦いの鍵を握る。【木下大輔】

▼日本ハムのショート・スターター戦術 最初に採用したのは4月2日楽天戦(楽天生命パーク)。加藤が先発して3回無失点、打者10人で片付けた。2番手のバーベイトが4回から登板。6回まで投げて、4回に喫した1失点のみ。2人で6回1失点と試合をつくったが、打線が楽天先発の辛島を打ち崩せず、敗戦。2度目は4日の同3戦目。先発した斎藤は1回2/3を3失点、打者10人で交代。2番手の上原は6回途中まで3回2/3を3失点で試合も敗戦。3度目は6日の西武戦(東京ドーム)。中3日で先発した加藤が2回を打者7人、無失点で降板。2番手の金子は“立ち上がり”の3回に5失点するなど4回まで2回4安打5失点と崩れて、この日も敗れた。