<阪神5-7ヤクルト>◇5日◇甲子園

 藤浪が「持っている男」っぷり全開!

 阪神は藤浪晋太郎投手(19)がプロ入り後初めて甲子園で被弾するなど、ヤクルトに先手を奪われ7回3失点。甲子園不敗連勝記録が「11」で途切れるところだったが、新井が7回に同点2号3ランを放ち、“敗戦投手”が吹き飛んでいった。チームは負けたけれど、藤浪の聖地不敗伝説キープは何より頼もしいぞ。

 打たれた。それでも負けなかった。新井貴の一振りで試合が振り出しに戻ると、その瞬間、藤浪は手を突き上げて喜びを表現した。だが、試合後の藤浪は神妙だった。自身の甲子園不敗神話は途絶えなかったが、チームの黒星の責任を一身に背負った。

 藤浪

 今日は自分がしっかり投げていれば勝てた試合でした。黒星は付かなかったですが、自分が負けたも同然です。

 0-0の5回。1死三塁から森岡を追い込んだが、最後は149キロ直球を右前に運ばれた。甲子園が悲鳴に包まれる中、マウンド上の19歳は唇をかみしめていた。続く中村には初球を左翼越えに本塁打。一挙に3点を奪われた。

 藤浪

 森岡さんを打ち取れなかった、あそこにつきると思います。打ち取っていれば、その後のホームランもなかった。

 5月5日、こどもの日。スタンドはちびっ子ファンであふれかえった。「プロ野球選手になりたいと、そういう影響を与えられる選手になりたい」。失点した5回以外、1安打しか許さなかった堂々のピッチング。三振も自己最多タイの7個奪った。少年少女に夢を与える内容だった。幼少期、藤浪家のベランダにはこいのぼりが、岸和田市の父晋さん(49)の実家では勇壮な五月人形が飾られた。「自分から飾って欲しいと言ったことはないです。古い習わしにこだわるタイプではないので」と本人の口ぶりはクールだが、両親や周囲からの、強く、大きく育って欲しいという願いは少しずつ具現化されてきている。敗戦投手にならなかったが、チームの負けを自らの責任と受け取る責任感も、新人離れしている。

 1軍のナイターが終わり、他の選手とは違う時間帯に寮で食事を取ることが多い。藤浪は寮の食堂の片隅で、誰も見ていないところでも必ず手を合わせ「いただきます」「ごちそうさまでした」とあいさつを欠かさない。「まずは礼儀。当たり前のこと」と育ててきた両親の、深い愛情が現在の藤浪をつくっている。そんな男だから、強運が巡ってくるのかもしれない。

 大体大浪商でプレーする弟・滉二郎さんも、午前中に試合を終え初めてスタンドで兄の勇姿を見守っていた。勇敢な勝利は見せられなかったが、背中を追う弟も気持ちを引き締めたはずだ。4連勝は持ち越されたが、聖地不敗連勝記録は11でキープ。やはり何かを「持ってる」19歳。悔しさの分だけ成長し、次の勝利につなげてみせる。【山本大地】

 ▼藤浪は7回3失点も味方が同点に追いつき、敗戦投手は免れた。これで大阪桐蔭時代から、阪神入団後のオープン戦、公式戦を通じ、甲子園で登板した試合での11連勝を継続。連続試合不敗記録を13とした。またこの試合では5回、ヤクルト中村に2ラン本塁打を被弾。プロ入り後甲子園での被本塁打は初で、大阪桐蔭時代の12年8月20日の夏の甲子園準々決勝、天理戦9回に吉村にソロを許して以来。