<コナミ日本シリーズ2013:楽天2-1巨人>◇第2戦◇27日◇Kスタ宮城

 エース田中の試合は俺に任せろ!

 楽天銀次内野手(25)が均衡を破る一打を放った。0-0の6回、1死二塁から巨人菅野のスライダーを捉え、先制の中前適時打とした。今季のレギュラーシーズンでは田中の先発した試合で打率4割1分1厘。CSファイナルステージの初戦でも本塁打で田中を援護した男が、負けられない一戦で大仕事をやってのけた。

 決勝打を放った銀次は、派手にガッツポーズした。6回、1死二塁で打席は回ってきた。「絶対に打ってやる。ここしかない」。巨人菅野の2球目、甘く入ってきたスライダーを見逃さなかった。完璧にミートし、中前への先制打。第1戦は完封負けし、日本シリーズ開幕から15イニング目で奪った得点に「気合と根性で打ちました」と喜んだ。

 監督の期待に応えた。第1戦は6度も得点圏に走者を置きながら、あと1本が出なかった。この日も5回まで無得点。拙攻続きだったが、6回にようやくつながった。無死一塁から藤田が1球で犠打を決め、理想的な流れで銀次が決めた。星野監督は「下手な野球をやって、よく勝った」。自虐交じりに振り返ったが、我慢を重ねてつかんだ1勝に目を細めた。

 銀次にとっても雪辱の一打だった。第1戦で決勝点につながる失策をし、打撃では5打数無安打。悔しくても、「(前夜は)よく眠れました。切り替えてますから。それがプロですから」と、第2戦へ向けて気合十分だった。汚名を返上し、プロ8年目にして日本シリーズでの貴重な決勝打。「やるしかないと思っていたので、うれしいです」と素直に喜んだ。

 頼もしくなった3番打者も、挫折しそうになったことがあった。「諦めたというか、野球はもうダメかなあと思ったこともありましたね」。捕手で入団したが、経験したことのない送球イップスになった。試合に出られず、悩み苦しんだ。「捕手をやめたい」。09年の春キャンプ前、当時の松井2軍監督に、勇気を振り絞って言った。試合に出るための苦渋の決断だった。それでも「打撃はやっていける」。だから、もう失敗はできない。覚悟を決めて、ここまではい上がった。

 これで1勝1敗のタイに戻し、明日29日から東京ドームで再び戦いが始まる。星野監督が「おそらく、打線が爆発してくれるでしょう」と力強く宣言すると、球場はドッと沸いた。銀次も「楽しくなってきましたね」と笑った。息を吹き返し、敵地に乗り込む。【斎藤庸裕】