届け、スンファンの心意気!

 阪神呉昇桓投手(32)が母国韓国で急性リンパ性白血病の少年たちを救う募金活動に参加していることが12日、分かった。昨年11月に帰国後、ソウル市内の病院を訪れ、パク・ジュサン君(9)を励ます動画が韓国インターネットサイトのDaumニュースファンドで公開されている。同サイトで募った寄付金は白血病児童の治療費になる。スンファンとジュサン君が交わした約束とは…。

 呉昇桓はマウンドに立たなくても救世主だった。日本海を越えて、心温まるニュースが舞い込んできた。クリスマスが近づく昨年12月19日、故郷で過ごすスンファンが向かった先はソウル市内の病院だった。黒い帽子をかぶった、9歳の少年と会うためだった。

 ジュサン君は13年冬に1カ月以上、風邪が続いて、急性リンパ性白血病の診断を受けたという。Daumニュースファンドで「野球が大好きで、ホームランバッターになるのが夢だ。すでに対戦したい投手もいる」と説明。そこで“指名”されたのは呉昇桓だった。同サイトでは対面の様子を映像でも紹介している。ジュサン君が「どのようにそんな速い球を投げるのですか」と質問すれば、右腕は球の握りや投球動作を実演。2人だけの野球談議だった。

 昨季、阪神で39セーブを挙げて来日1年目からセーブ王に輝いた。マウンドでは表情を崩さない「石仏」も、病院では柔らかい笑顔で励ましの言葉をかけた。

 呉昇桓

 お兄ちゃんも手術を2回した。とても痛かったよ。ジュサン君もすぐに健康になれるさ。小学校高学年から野球を始めたんだ。ジュサン君も、その時から野球すればいいな。早く健康になってね!

 ジュサン君

 野球する姿をテレビだけじゃなく直接行って見たいです。父や母の言うことをよく聞いて早く治して大阪に行きます!

 

 野球少年との絆も、スンファンが今年、戦うための力になるだろう。大阪名物のたこ焼きを紹介すれば、ジュサン君は「早く大人になりたい」と笑う。このサイトを見た韓国内の読者から寄付金を募るクラウドファンディングで目標額は500万ウォン(約5000万円)。担当者は「ここに入る寄付金は、すべて白血病の子どもを救うために使われます」と説明する。野球がつないだ縁だ。スンファンはジュサン君に言う。「お兄ちゃんとキャッチボールしなきゃね」。いまは常夏グアムで自主トレ中。人を笑顔にするため、虎の守護神は今年もおとこ気で投げる。【酒井俊作】

 ◆阪神選手の主なチャリティー活動

 I型糖尿病と闘う岩田は、09年から「糖尿病研究基金」に1勝につき10万円を寄付。藤川(現レンジャーズ)は骨髄移植活動を支援。赤星氏は現役時代の03年から盗塁数に応じて車いすを施設・病院に寄付。桧山氏(日刊スポーツ評論家)は03年から、震災遺児らが生活する「あしなが育英会神戸レインボーハウス」を毎オフ慰問、寄付金や野球用具を持参した。