KID挑戦切符は所がゲット/HERO’S
<HERO’S:東京大会>◇15日◇日本武道館◇観衆8770人
「戦うフリーター」が、世界一を視野に入れた。初めてメーンに抜てきされた所英男(28=リバーサルジム)が、鮮やかな秒殺劇を演じた。空手家の池田祥規(32=極真会館)に1回49秒、三角絞めで1本勝ち。ミドル級世界王者の山本“KID”徳郁への挑戦権を懸けた今大会、有力候補の須藤元気と宇野薫は判定勝ちに終わったが、圧勝で見事にアピール。タイトルこそ懸からないが、5月のHERO’Sでの山本への挑戦権を手中に収めた。
フリーターが、大会名通りのヒーローになった。初のメーンで所が、鮮やかな秒殺劇を演じた。場内が興奮に包まれる中、マイクをつかむ。「今年はKID選手、須藤選手、宇野選手に勝てるよう、挑戦していきたい」。家賃4万3000円、6畳風呂なしアパートも苦にしない無欲の男が、日本武道館を埋めた8770人の前で宣言した。
強かった。空手家の池田との一戦。開始直後に右ローキックで一瞬ぐらついた。だが、この1発で、初メーンの緊張感は抜けた。闘争心に火がつく。タックルでマウントポジションを奪う。両足を相手の首に絡めて後頭部を押さえると、相手の力が抜けていくのが分かった。「落ちた」。レフェリーにアピール。1回49秒のKO劇だった。
敵は相手だけではなかった。大会のテーマは「打倒山本」。昨年大みそかの決勝で山本に敗れた須藤、準々決勝で自分が負けた宇野らと挑戦権を懸けて争った。この日のリングで有力候補の須藤、宇野は判定までもつれた。だが、所は1本勝ち。存在感を見せた。実力と迫力はリングサイドにいた山本にも伝わったはず。K−1の谷川貞治イベントプロデューサーも「第1候補は所くん。可能性を感じるし、一番勢いがある」と事実上、所の挑戦を認めた。
地道な努力の結果でもある。尊敬するHERO’Sの前田日明スーパーバイザーの横浜市内の自宅に、年明けからほぼ毎日通う。今まで筋力トレを一切やってこなかった男が、数百回のスクワット、腕立て伏せなどを繰り返す。体重も2キロ増えた。打倒KIDに向けて、パワーアップを図った成果が出てきた。
この日の勝利で、風呂つきの部屋に引っ越すことも決めた。5月の山本戦が実現すれば、連続メーンも確実だ。極貧生活とも完全におさらばできる。「目標は高いところに置いている。世界一の人とできるなら光栄です」。所が、HERO’Sの顔になった。【田口潤】
[2006/3/16/09:05 紙面から]
写真=所英男(下)は池田祥規を三角絞めで破る(撮影・柴田隆二)
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