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  インタビュー<日曜日のヒーロー>
 過去のインタビューは、日刊スポーツ紙面(東京本社発行分)でもご覧になれます。
 ご希望の方は→紙面バックナンバー申し込み
 なお、WEB上では、紙面より1週間遅れでの公開となります。
第473回    柳楽優弥  
2005.07.17付紙面より

柳楽優弥
写真=昨年のカンヌ受賞時から「眼の強い子だなあ」と思っていました。取材を楽しみにしていたら、そのまっすぐな瞳に1発KO。千両眼とでも言うのでしょうか。あと20歳若かったら…。同い年の子どもがいてもおかしくないのに、そんな夢想を描いていると「その人の目を見れば考えていることが分かる」という言葉が聞こえてきて、無心にシャッターを切り始めたのでした。いい役者になって下さい。「お姉さん」も応援しています
(撮影・浅見桂子)

「世界一」はスタート地点

 サッカーが大好きな普通の高校1年生。世界の頂点に立った男優。柳楽(やぎら)優弥が、2人の自分に戸惑いながらもしっかりとした足取りで大人への階段を上っている。14歳、デビュー作でカンヌ国際映画祭の男優賞を獲得したときは「巻き込まれちゃってる」とも感じたが、2作目を撮りながら役者としてやっていく決意も固まってきたという。「ぶっちゃけ」を連発しながら、15歳の自分を語った。


ありえない

 取材場所の都内ホテルの一室にサッカーボールを持って行った。部屋に入ってきた柳楽は、真っ先にテーブルの上のボールに目を向けると「おーっ! ボール触るの、久しぶりです。感触いいですね」。中学ではサッカー部に所属していたが、仕事が忙しくなって休部している。リフティングをリクエストすると「いいですよ」と気軽に十数回。自分でも「しゃべるのが苦手」というシャイな性格で知られているが、こちらの心配は杞憂(きゆう)だった。新作映画「星になった少年」の撮影でタイに2カ月滞在した時も、現地スタッフとサッカーやセパタクローでコミュニケーションをとったという。そしてカンヌ受賞後を語り始めた。

 「今までの人生の中で、タイ(での撮影)ほどありえないことはなかった。行く前はそんな大変じゃないだろうって思ってた。2カ月できんだろ、って。でも行って気付いた。オレってそういう人なんですけど(笑い)。行ってみてショックだらけ。まず、空港に着いて暑さにショックで。次に食べ物にもショックで。1〜2週間だったら、遊びに行くって感じじゃないですか。慣れればいいとこなんですけど、慣れるまでが大変なんですよ」。

 それでも、俳優としてステップアップになることは分かっていた。

 「オレ心配性です。でもタイで撮影って、いいことじゃないですか。そこまでありえない話に飛び越えちゃうと心配じゃなくなるんです。心配しなくなるんです。あ、ちょっと訂正。『ありえないので、考える力がなかった、想像がわかない』のかな。想像をわかせたくなかったのかも。大変だって分かってたから、今から大変だって思ってもしょうがないって。山のてっぺんにいる時『もうこれ以上歩けない』とかそんなバカなこと言ってたら降りられないでしょう。やらなきゃいけないって決めていたので。だから、それについて深刻に考えなかった」。


ビミョー

 1年前はこう思っていた。「役者一本ってノリじゃないけど、やめらんないなあ」。想像してみよう。友達と中学のグラウンドでボールを蹴っていて、ふと気付くと、世界の幾万もの星々でできた山のてっぺんに1人立たされていた。しかも「史上最年少」「日本人初」という冠をかぶっている。「演技に年齢は関係ない。彼の顔が頭から離れなかった」。審査委員長だったクェンティン・タランティーノ監督は選考理由をそう説明したが、それは世界で誰も経験したことのないアメ=栄誉であると同時に、ムチ=試練でもあったはずだ。当然の戸惑いから、1歩踏み出せたのも、今回の「ありえない」状況があったからだというわけだ。

 「タイで撮影してる時に思ったんです。『甘ったれたこと言ってたらできないぞ、ちゃんと芝居に集中しなきゃ』って。それでどんどん楽しくなってきた。役者をやっていこうって」。

 俳優という山をもう1度すそ野から登っていく決意のようなものが芽生えてきたようだ。大人ばかりに囲まれている仕事へのスタンスも明快に話す。

 「映画の人たちって基本的に、語る人が多いじゃないですか。オレは言いたいこともちゃんと言うし、語ってるのも聞きます。自分の思っている意見と合っていれば真剣に聞きます。そうじゃなかったら『そうですね…』って(笑い)。語ってることも、キツイと思うんじゃなくて、聞かなきゃいけないこともあるんです。重要な言葉を聞き流してしまうこともあるんだけど」。

 自分の性格を聞くと「オレって、終わったら全部楽しいって思うタイプ。やってる時は楽しくなかったのかもしれないけど、覚えてないんです」と分析してみせたが、それは負けず嫌いの裏返しの言葉のようだ。自分で事務所に履歴書を送って入った世界。決して弱音など言うまいという覚悟がすけてみえる。

 「一件落着するまで1人で考え抜くんですよ。すっげー、考えるんです。ちっちゃいことはどうでもいいんですけど、考えなきゃいけないことはずっと考えてる。考え抜いて、一件落着したら、ハイ終わり! みたいな感じなんですけど」。

 −−相談はしないの

 「自分じゃ考えられないくらいになったら相談します、家族に。おじいちゃんとかに『どうしたらいいの』って。やる気になるような言葉をくれるんです。いや『相談』っていうビミョーなノリじゃないですけど、話してる途中で『どうなの』みたいな。友達にも『頑張れよ』って言われてやる気出たこともあった。いろいろ感じてくれたのかもしんない」。

 実際にタイから友達にした電話は「大変」でも「つらい」でもなく「今、学校どうなってんの」だったという。

 「普段は普段。しゃべりまくりだし、クールではないんです(笑い)。仕事とか映画の話はあんまりしない。やっぱり女の子の話とか…。学校行ってる時は仕事のこと考えないようにしてた。仕事場で話してるより、そりゃ、学校で話してる方がおもしろいです」。

 初めてかいま見せた高校生の一面。世界の高みに立った俳優と15歳の少年が、無理なくシンクロしてくる。柳楽が1年がかりで折り合いをつけてきたものが、伝わってきた。


ぶっちゃけ

柳楽優弥

 今後についても、大人が思う以上に、現実的に地に足をつけた考え方をしている。

 「楽しんでやっていければいいんです。大変なこともあると思うんですけど。多分、楽しいことばかりじゃない。いろいろな大変なことがあると思うんですよ、絶対あるでしょう? 他の人から見たら『そんなの大変じゃないよ』って思われるかもしれないけど、きっとあるんです。だから、基本は普段の生活を大事にしたいし、今もしてます。それで、その時にしかできない役をやってみたい。今なら普通の高校生の役とか。20歳ではできないけど、15歳ならできる役。そういうのやりたいんですよ」。

  ◆  ◆  ◆

 こちらが少年ではなく、俳優から話を聞いている気持ちになった時、タランティーノ監督が忘れられなかった、あの目がフッとはにかんだ。

 「スクリーンを通して見られるのはうれしいんだけど、素の部分を見られるのが苦手です。ぶっちゃけ、まだ取材ではうまくしゃべれない。しゃべれたら楽しいんだけど…」。

 −−今、結構しゃべってますよ

 「え、そうですか。ぶっちゃけちゃってるから、おもしろくなってきました(笑い)」。

 プレゼントしたサッカーボールをドリブルしながら、部屋を出て行った。口ほどにものを言う、たぐいまれな目を持っているけれど、もっともっと話を聞きたいし、何げないしぐさでも見ていたい−。カンヌの審査員のハートをわしづかみにしたものの正体が、分かったような気がした。


演技以前に圧倒的存在感

 「星になった少年 Shining Boy&Little Randy」の河毛俊作監督 演技以前に、存在感が圧倒的にあるんです。カメラを通して見たとき、それを感じました。子役って意外と技術を持っているものなんですが、訴えかける存在感を持っている子役はめったにいない。その存在感を保っていくためには、いい監督、いい作品に出会い続けるしかないんでしょうね。その意味で責任を感じてますし、これから出会う監督たちも感じるんでしょう。撮影中は「通販でバナナクッションを買った」とか「(ヒップホップグループの)ドラゴン・アッシュが好き」なんて話をしましたよ。結構しゃべるんですよ。


 ◆柳楽優弥(やぎら・ゆうや) 本名同じ。1990年(平成2年)3月26日、東京都生まれ。現在都内の高校1年生。02年に事務所に応募して芸能界入り。初めて演技した映画「誰も知らない」で04年カンヌ国際映画祭男優賞受賞。同年、米誌タイムの「アジアの20人」にも選ばれた。身長は02年「誰も−」のオーディション時は150センチ、04年の男優賞受賞時は163センチ、現在は167センチ。足のサイズ27センチ。血液型A。


(取材・小林千穂)

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